第百十二話 一同、赤壁に出陣するのことその三
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「わかる、よくわかる」
「本当にです」
顔良もだった。
「私もだ。姉者があれでだ」
「もう文ちゃんって本当に」
「そうだな。何かと前に出るから」
「もうフォローが大変で」
「桃香はだ」
公孫賛が言うのは彼女のことだった。
「いつも緩い感じでだ。おっとりしていてだ」
「それに巻き込まれてだな」
「そうしてなのね」
「しかもあの胸だ」
劉備の武器だ。彼女の自覚していない。
「あの胸でだ。全てを蹂躙するのだ」
「まあ私は胸はな」
「すいません、私も」
しかしだった。二人はだ。
胸についてはこう言うのだった。
「それなりにあるからな」
「ですから」
「私も実際にない訳ではないが」
見れば公孫賛も胸はある。それなりに。あくまで普通に。
「しかしあの胸は最早兵器だ」
「目立つな、確かに」
「お顔も可愛いですし」
「その天然にいつも振り回されてだ」
しかもだった。それに加えて。
「私は結局だ」
「目立たないのだな」
「忘れられるんですね」
「あの荀ケもだ」
言わずと知れた曹操の筆頭軍師だ。
「私のことを完全に知らなかったのだぞ」
「あれは許してやってくれ」
夏侯淵がこのことを公孫賛に言った。
「桂花も悪気はないのだ」
「それはわかるが」
「本当に知らなかったのだ」
そうだとだ。公孫賛に話すのである。
「悪意やそうしたものは一切ないのだ」
「わかっている。わかっているが」
「それでもか」
「本当に私は知られていないのだな」
公孫賛が残念に思うのはこのことだった。
「どうしてもそうなるのだな」
「そういえば荀ケさんは」
彼女はどうなのかとだ。顔良は話題を変えてきた。
「変わりましたよね」
「そうだな。言われてみればな」
「随分丸くなりましたよね」
「以前は極端な男嫌いだった」
今でもその傾向があるがそれでもだというのだ。
「しかしあちらの世界の面々と話したりしてだ」
「変わりましたよね」
「特に覇王丸殿と話してだ」
彼と話したことが大きかったというのだ。
「あの御仁のことに非常に感銘を受けてな」
「覇王丸さん。確かにあの人のお話は」
「そうそうできるものではない」
夏侯淵もだ。飲みつつ会心した顔で述べた。
「想いを封じて。そうして剣のみに生きるのは」
「お静さんも覇王丸さんをお慕いして」
「それを知っていて。応えたいが」
「それでも剣をなのですね」
「剣の道に女は不要」
覇王丸が常に己に言い聞かせていることだ。そのことをだ。
夏侯淵はだ。強い顔で言った。
「それを貫く為にだ」
「あえてですから」
「漢だ」
夏侯淵もだ。覇王丸を認めた。
「まさにな」
「その漢を見たからか」
公孫賛も言った。
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