第二章
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「こうですから」
「毛の色が奇麗で毛並みもよくて」
「それで顔立ちも可愛くて」
「足も尻尾も短くてな」
「上等のぬいぐるみみたいですから」
「ずっと店に置いておきたいな」
店長はこうも言った。
「そう思う位にな」
「いい娘ですね」
「だからな」
「こっちもですね」
「勿論他の子も大事にするがな」
それと共にというのだ。
「実際にしているし」
「この娘もですね」
「そうしよう、ペットショップでも幸せでいて」
「そして家族に迎えられても」
「幸せにな」
その様にというのだ。
「なる様にしよう」
「そうですね」
「ペットショップは命を扱うんだ」
店長は強い声で述べた。
「だからな」
「ええ、命を粗末にするな」
「命を粗末にする奴なんてな」
「碌な奴じゃないですね」
「ヤクザ屋さんレベルかな」
「それ以下ですね」
「そんな奴は死ぬとだ」
店長はこうも言った。
「餓鬼になるんだ」
「仏教で言うあれですね」
「とことん浅ましくて卑しくていつも餓えと渇きに苦しんでるな」
そうしたというのだ。
「どうにもならないのになるんだ」
「それが餓鬼ですね」
「そうなりたくないだろ」
「誰がなりたいんですか」
店員は店長に即座に言い返した、彼は二十代後半だが店長は三十代後半といった感じで二人共目は優しい。
「そんなのに」
「だったらな」
「命は大事にですね」
「ああ、下手したら餓鬼どころかな」
それどころかというのだ。
「地獄に堕ちるぞ」
「そうなりますよね」
「あんまり悪いことするとな」
「だからですね」
「ああ、命は大事にだ」
「ペットショップで働いてるなら余計にですね」
「そうしていくぞ」
こう言ってふわりをペットショップに連れて行った、用意されたコーナーに入った彼女はまるでぬいぐるみの様でしかもとても大人しかった。
その彼女を見て店長はまた言った。
「本当にこのままな」
「ずっと一緒に店に置きたいですね」
「ああ、売るのが勿体ないな」
「それ位の娘ですね」
「全くだよ」
「クゥンクゥン」
ふわりはコーナーの中で二人を愛情に満ちた目で見ていた、二人はその彼女を見て絶対に幸せにすると誓ったのだった。
オークションの場で 完
2021・11・26
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