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身体を壊して
第三章

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「私だって何かしていないと」
「新しい娘によね」
「とって代わられるんじゃないかって」
「思うわよね」
「何もしなかったら」
「そう、一年私何もしなかったでしょ」
 新体操のことはというのだ。
「それでその間ずっとね」
「不安だったの」
「不安で仕方なかったわ」 
 実際にというのだ。
「それで寝られなかった時もあって何かとね」
「起きてもなの」
「そう、その時もね」
「不安だったの」
「それで知ってる娘が伸びたらとか思うと怖くなったり」
 そうもなったりというのだ。
「焦ることも嫉妬することもね」
「あったの」
「ええ、それでわかったわ」
 姉にやつれた顔で述べた。
「人間何かしていないとね」
「嫌な気持ちになるのね」
「悪いこともね」 
 そうしたこともというのだ。
「考えるわ」
「そうなるのね」
「ええ、何か出来るってことはね」
 このことはというのだ。
「いいことよ」
「それに熱中出来て結果も出せるから」
「そう、それで嫌な気持ちにもならなくて」
 紗理奈はまたこの言葉を出した。
「そして悪いことも考えないから」
「いいのね」
「そのことがわかったわ、だからこれからはまた」
「頑張っていくのね」
「そうするわ、もう嫌な気持ちになったりするのは沢山よ」
 紗理奈の偽らざる気持ちだった。
「だからね」
「それでなのね」
「ええ、脇目も振らずやっていくわ」
「そうすること、そう出来たら一番ってことね」
「そういうことよ、そのことがよくわかったわ」 
 この一年でとだ、こう言ってだった。
 紗理奈は復帰するとまた新体操に戻った、ブランクを取り戻す為に必死になってそれが整うと本来の猛トレーニングを再開した、そしてまた世界でも知られる選手になったが。
「もうあんな思いは懲り懲りよ」
「やっぱり動いていないとよね」
「人間駄目よ」 
 今度はドラマの主演が決まった姉に言った、そして頑張り続けた。それは姉の桂里奈も同じで必死に努力を続けた。すると二人共焦ることもなく嫉妬することも不安を感じることなく純粋に前を向いていられた。


身体を壊して   完


                    2021・11・23
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