第2楽章〜白衣の学士と四色の騎士〜
第16節「翔のいない日々」
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で言うなら、僕の方から風鳴司令にかけ合ってみるよ」
「おう!頼むぜ純!」
「でも、覚悟はして欲しい。町内ボランティアとはワケが違うんだ」
メガネの奥で純の瞳が鋭く光る。
対して紅介は不敵に──或いは何も考えていないのかもしれないけど……──笑って、僕達全員を見回した。
「俺達を誰だと思ってやがる?月とリディアンが吹っ飛んだあの日を一緒に潜り抜けた仲だろ?んなこたぁ今更言われるまでもねぇッ!」
兄さんも、恭一郎も、そして僕も頷く。
今更覚悟を問われるまでもない。
「分かった。なら、今からアポ取って来るよ」
そう言って純は、通信端末を取り出す。
昼休みの終わりを告げる鐘が鳴る頃、通信を終えた純は僕達の方を振り返り──
ff
「はい、これ」
「ん……ああ、マリアか」
頬に押し付けられた冷たい缶。
渡されたスポーツドリンクを受け取ると、翼は再び倒壊したビルへと視線を向ける。
「見つからないわね……あなたの弟」
「これだけ探しても見つからないとは……何処に行ったのだ……」
マリアは翼の横顔を眺め、眉を下げた。
翼の気持ちが、彼女には痛いほど分かるからだ。
7年前、セレナが業火と瓦礫の中へ消えたあの日。それを見ている事しか出来なかった、無力な自分。
今の翼の憂いを帯びた横顔が、自分と重なった。
「でも、やっぱりおかしいわ。これだけ瓦礫を退かして、痕跡が一切見つからないなんて」
「ああ。ここまで何も見つからないと、実は倒壊寸前に脱出したのではないか……という希望が浮かんでしまう程だ。だが……ならば何故、何の連絡も寄越さないのだ……」
「翼……」
唇を噛み締め現場を見つめる翼の目尻には、溢れかけている雫が見えていた。
「……春谷さんは、とても後悔していた。置いて行くべきでは無かった、と」
「でも、あの場ではそれが最前だったんでしょう?」
「その通りだ。皆が最善を尽くし、無辜の人々を傷つけさせることも無く、奴らを退けた。だが……その上で翔は……翔は……くっ……!」
奥歯を噛み締める翼の背中に、ふと腕が回される。
気が付くと、翼はマリアに抱きしめられていた。
「マリア……?」
「大丈夫よ。きっと見つかるわ。だって、翔はあなたの弟なんでしょ?それともあの子は、たった1人の姉を残して、こんな所で命果てるような姉不孝な子なの?」
諭す様なマリアの言葉に、翼はハッとする。
そしてゆっくりと、その口から応えを捻り出した。
「いいや……翔は……私の弟は、強い男だ。叔父様に鍛えられた身体に、緒川さんから磨かれた技。それに頭も回る方だ。そして何より……立花の事になると我武者羅で、どんな事があろうと泣かせたりしない。自慢の弟だ」
「ふふっ……そこ
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