第114話『師弟対決』
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前方を見て──まず自分の目を疑った。
目の前には風香が立っているだけ……のはずなのだが、その周りに流れる"風"まで視えるのだ。うねって捻れて渦を巻き、風はその動きを止めることはない。実際に肉眼で風を視たことがある訳ではないが、これは風で間違いないだろう。
しかも流れの一つを注視していると、脳裏に映像が浮かんできた。
「これって……!」
疑うまでもない。2回戦でも視たものと同じ感覚だ。つまりこれは──未来の景色。晴登は今、これから起こるかもしれない事象を視ているのだ。
「……っ」
風香は突然の晴登の変化に警戒し、迂闊に近寄って来ない。好都合だ。その間にこれらの風を全て視て、未来を掌握する。目まぐるしく変化する映像の数々に頭を抱えながら、晴登は風を見渡していった。
これらの未来の確証性はまだ保証されていない。それでも、今は縋るしかなかった。
「──風の導くままに」
次にこの短時間で把握した分の未来を、自分の都合のいいように、望む結果になるように繋ぎ合わせる。
そしてただ一つ導かれたこの未来を視るに、どうやら勝利の女神はまだ晴登のことを見放していないようだった。
なら後は、その通りに動くだけ──
「"噴射"!」
「っ!」
風香が動かない間に、晴登は先手を仕掛けた。"噴射"の速度は、瞬間的ならば"疾風の加護"をも上回る。そんな速度で急激に迫れば、当然風香は迎撃せざるを得ない。
「"旋刃"!」
「ふっ!」
大気を切り裂くような鋭い蹴りを、寸前でジャンプしてかわす。これはさっき確認できた未来。だから避けるのは簡単だ。
しかし、さすがは風香。晴登が避けたのを見てから、空ぶった足をその勢いのまま踏み込み、オーバーヘッドキックを繰り出してきた。その反応速度たるや──だが、
「"天翔波"!」
「なっ!?」
それすらもわかっている晴登は、先出しで技を放ち風香を叩き落とした。体勢を崩した彼女は仰向けのまま地面へと落下する。
だが角度が浅く、まだそこはフィールドの上だった。
晴登は素早く着地し、追い討ちをかけるべく拳を振りかぶる。
「"烈風拳"!」
立ち上がる暇もない風香は、左側に飛び退いて避ける──それも知っている。
「そらぁ!!」
鉄拳をそのまま放つと見せかけて、身体を逆にひねり、手の甲で彼女を捉える──そう、裏拳だ。
「くっ……!」
不安定な姿勢に加えて、予想外の一撃。いくらガードが間に合ったとはいえ、彼女は踏ん張ることもできず、場外へと吹き飛ばされた。
ここで壁まで飛ばされていれば、晴登のようにあわよくば復帰の可能性があったかもしれないが、生憎裏拳
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