第114話『師弟対決』
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逆に不意を突かれた晴登の方が喰らってしまう。
「ぐっ……!」
無様に地面を転がり、危うくフィールド外に出るというところで止まる。
蹴りのはずなのに、まるで刀で斬られたかのような鋭い衝撃だった。怪我をしていないはずなのに疼痛が消えない。それほどまでに痛覚を刺激されたということか。
「……は、やべっ!」
「"風槍突"!」
「ぐぎぎ……!!」
お腹を抑えながらゆっくりと立ち上がろうとしたところで、眼前に迫り来る風香の姿を視認する。
風香の前蹴りが放たれたのに対して反射的に両腕でガードするが、あまりの威力にまるで骨が軋むかのような錯覚に襲われた。
「うがぁ!」
「おっと」
これ以上押されると場外になってしまうので、すぐさま押し返すように両腕を振るって暴風を起こし、足ごと風香を吹き飛ばす。
力強い反撃に彼女は目を丸くしていたが、慌てることなく軽々と着地した。
「よく受け止めたね」
「はぁ……結構、ギリギリですけど……」
痺れる腕を抱きながら、晴登は荒い呼吸を繰り返す。
──今のは本当に危なかった。
"疾風の加護"のおかげで何とか踏ん張れたが、それがなかったら間違いなく壁まで吹き飛ばされていただろう。今度は復帰する余地もないくらいの勢いで。
「う、ぐ……」
「どうやら、そろそろ限界みたいだね」
唐突に視界がぐらつき、足元もふらつく。どうやらもう魔力切れが近いらしい。
いつもならこんなに早く魔力が枯渇することはないのだが、今回は被弾しすぎた。HP代わりの魔力が相当削られたらしい。
「本当に……短期決戦だったな……」
試合開始から、時間にして約5分といったところか。ちょうど"疾風の加護"が切れる頃だ。そんな短時間でここまで追い詰められるとは……実力差が開きすぎている。
ここから逆転することは──正直厳しい。
「どうすりゃいい……考えろ!」
だが終夜と約束したのだ。そう易々と諦めてたまるものか。
魔力は残り少ない。このまま戦っても先に魔力が切れるのはこちらの方だ。それなら、一発KOのリングアウトを狙うしかない。
「まぁ、それができたら苦労しないけどな……」
さっきまでのたった数分の応戦で、風香相手にそんな余裕も隙もないのは明白だった。彼女はすこぶる冷静で、油断もしていない。格下だからといって、晴登を侮ることは決してしていないのだ。
「結月……」
こんな時に真っ先に頼りたい結月は隣どころか、会場にすらいない。……というか、すぐに彼女に頼るのは男としてどうなのか。ダメだダメだ、自分の力でどうにかするんだ。
「また、あの力があれば……」
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