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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
【著名な戦闘】ヴァンフリート4=2防衛戦
【著名な戦闘】ヴァンフリート4=2防衛戦(9)〜セレンゲティ氷原大機動戦(上)〜
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 フォルベック少将はヴァンフリート4=2基地に着任したのは会戦のほんの数日前であった、彼は自身の率いる部隊の掌握を急いでいた。
 基地司令官セレブレッゼ中将は兵站分野の専門家であり前線指揮においてはキャリアは皆無に等しく、であるからには自他ともに本作戦の実質的な司令官は己であると認識していたからである。

「敵の集積地は強大です、さらには一万を超える艦隊であります」
 フレンチ参謀長は重々しい口調で述べる。
「制宙権は敵方にありますが、これを利用する気配はありません。現時点では敵も大規模な艦隊行動を行えば4=2への我が軍艦隊が殺到すると予想していると思われます」

 居並ぶ指揮官ら、フォルベックの指令を直接受ける人員はほぼ佐官ばかりである。その為に少将たるフォルベックが呼ばれたのだ。
 構成邦軍を算入しても正面兵力の総計四万程度、一個師団長としての経験があるフォルベックの格であれば十分に相手の面子も保てる
 フォルベックのこの戦役における自分たちの位置づけは至ってシンプルだった。

「要は星間機動戦力の問題なのだ、地上軍の意味は治安や奪った後の支配の維持が本質でありこのような戦役では付け足しに過ぎんよ」
 口外御法度だぞ、といたずらっぽく嘯きながら”同盟軍”幕僚たちを見回す。
「つまりぃ、4=2はこの戦役の中ではただの端役程度に過ぎないのだ、我々の役目はできる限り多くの帝国艦隊を釘付けにすること。つまりは主戦線から現在対極にいる帝国軍兵力を引き離し、自由惑星同盟の勝利に寄与することが本戦の目的であるよ」

 フォルベックはあっさりとこの戦の軍事的無価値さを率直に評価した。この放言に近い発言をしたことは構成邦軍がいないこと、そしてこの発言をもってしてもフォルベックは麾下の常備地上軍将兵らが高い士気とを持っており、それを自身があてにできることを承知していたからだ。むしろ明確に規定することで戦略意図の確認を行わなければならないと信じてすらいた。

「つまりこういうことですが、この基地には既に疑似餌以上の価値はない、と?」
 防空司令官のウェンライト准将は悲しげに溜息を吐いた。彼はこの基地においてはセレブレッゼと並ぶ一番の古参である――本来の役目は宇宙からの侵入を防ぐ戦闘であり、地上戦は専門外であるが空軍の取りまとめのために准将へと昇格させられた。

「そして我々は艦隊の連中の目を引くためにダラダラと戦って戦場から引き離さないといけないって事ですか」


 指揮官らの間に沈黙の帳が降りる。後方要員を除けば現状こちらは4万半ば程度。敵は10万、ましてや”その気”になれば機動爆撃でこちらを一気に叩き潰せる。
 報告に上がっていた通り練度の問題があるにしても些細な問題に過ぎないのだ。

「‥‥地下のトンネル網はヴァンフリ
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