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イベリス
第二十九話 報いを受けた人その十三

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「咲ちゃんの小学校の先生も」
「先生はアメリカの人達よりましかしら」
「それでも許されないことしたって思ってるのね」
「それが私もわかったわ」
「そうよね、咲ちゃんも」
「お顔は同じで年齢は重ねていたけれど」
 十年のそれをというのだ。
「けれどそれを差し引いてもね」
「変わっていたのね」
「穏やかで優しいお顔になっていて雰囲気もね」
 これもというのだ。
「変わっていたの」
「優しくだったのね」
「本当に別人みたいに」 
 愛にその時の女性の顔を思い出しつつ話した。
「なっていたわ」
「それは許されないことをしたと思っていてね」
「深く反省して」
「そこから変わったからね」
「別人みたいになっておられたのね」
「そうよ、人間そうした反省をして」
 愛は遠くを見る声になっていた、その声で語るのだった。
「成長するのね」
「大人になっても」
「そう、大人になっても人はね」
「成長するのね」
「人の成長は死ぬまでっていうけれど」
 それでもというのだ。
「そのこともわかったわ」
「お姉ちゃんも色々わかったのね」
「咲ちゃんの今のお話でね」
「そうなのね」
「若し反省する機会がなかったら」
「先生は怖い人のままで」
「それでね」  
 そのうえでというのだ。
「多分報いを受けていたかもね」
「怪我したのが報いじゃないの」
「もっと酷い報いを受けていたかもね」
 こう咲に話した。
「何かしらの」
「そうだったの」
「パワハラそのものだったのよね」
「それがね」 
 実際にとだ、咲も答えた。
「そうだったのよ」
「殴ったり蹴ったりは?」
「しなかったけれどね」 
 それでもというのだ。
「言葉が凄かったの」
「言葉の暴力ね」
「身体が悪い人を本当に無理に運動させたりして」
 そうしたことをしていてというのだ。
「罵ることもね」
「酷かったのね」
「もう人格なんてね」
 生徒のそれをというのだ。
「徹底的に無視して押さえつける」
「そんな風だったのね」
「そうだったの」
「よくそれで問題にならなかったわね、いえ」
 愛は自分で自分の主張を打ち消した。
「学校ってそうしたこと問題にならないのよね」
「先生が生徒を罵っても」
「アルバイト行ってたらそんなこと言ったらパワハラになることも」
 そうしたこともというのだ。
「学校で先生がしてもね」
「問題にならないの」
「殴ったり蹴ったりしても」
 その先生も流石にしなかったこともというのだ。
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