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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
あたしと香子は、アイドルになる
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喚びだされた住人の一人、堀川雷鼓がそう言った直後、彼女ら3人は足から光の粒子になって消えていく。

「え…なにこれ。」
「一時間。僕の能力だとこの子達がこの崩壊世界にいられるのは一時間が限界なんだ。」

よくわからない事態にソフィーはそう説明してくれた。
たった一時間。それだけだったけど、とても為になる時間だったし、長くも感じた。
それにだ

「そっか…ありがとう。ミスティア、響子、雷鼓さん。だいぶうまくなったよ。」

音痴だったあたしが、自信を持って歌えるようになるくらいには上達できた。
きっとあの子達は、すごい子達だ。

「よし、次だ。」

そうしてまたソフィーは祈り始める。
ボイストレーニングだけじゃない。残り一週間という期限の中、あたしはよりアイドルらしくなる為に少しでも多くのことを学ばないといけない。

「ふふ…。」
「何?紫式部。」

と思っていると、香子があたしの顔を見て笑った。
なにかついているのかとレッスンルームにある鏡を見るが、何もついていない。

「いえ、幻想郷の方々とれっすんをこなしている内に、随分と自然な笑顔をするようになられましたね。」
「…?」

振り返ってもう一度鏡を見るも、そこにはいつも通りのあたしの顔。
初見であまりいい印象を与えなさそうな、見慣れた顔が映っているだけだ。

「歌っている時、とっても楽しそうだったよ。」

と、隣にいたソフィーがそう言った。

「歌ってる時?」
「そう。とっても自然な、アイドルみたいな笑顔だった。これならアイドル対決に絶対勝てるよ。」
「そんな事言われても…。」

もう一度笑顔の練習をしてみるも、やはりぎこちない笑顔しか出ない。
そうしていると、背後からポンと肩を叩かれる。

「笑顔の練習か?奇遇だな。私もそれの真っ最中なんだ。」

振り返ればそこには新しい幻想郷の住人が。
無表情で、能面を頭に飾って…こう、なんとも個性的なスカートをはいた子だった。

「じゃあレッスンよろしく、こころちゃん。」
「任せろ。感情を表に出すのは苦手だが、やってやるさ。」

彼女の名は秦こころ。
能面の付喪神みたいなもので、感情の出し方があまり得意ではないそうだ。

「同じ目標を持ってた方が、トレーニングもやりやすいかなって。」
「なるほど。」

そんなわけで、一時間限定の講師付きトレーニングがまた始まる。

「源葵、そのサーヴァントの紫式部…だな。覚えたぞ。私は秦こころ。共に笑顔の練習をしよう。」

人差し指で口角を持ち上げ、擬似的な笑顔を作ってこころはそう言った。


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