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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第九話 魂の総量はシュピーネ並だから仕方ない
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―――夜・諏訪原大橋―――
夜の闇の中、ヴィルヘルム・エーレンブルグはスワスチカが開いた方向を見ていた。彼が今、何を思っているのかは分からない。なぜならこの現実が奇妙だからだ。
血気盛んなカズィクル・ベイ。血と暴虐の信奉者。そんな彼が本来進んで一番槍に名乗り出たはずである。だと言うのに行動を起こさず、その役を奪われた。奇妙としか言いようが無いだろう。
「ふん……」
加えて言えば、そうなったにも関わらず怒りの色が見えないこともまたおかしい。穏やかと言うわけではないが別段憤っているようでもなかった。故に何を考えているのか分からない。
「よぉ、てめえ何のつもりだよ。正直俺はクリストフの野郎が来ると思ってたんだが?」
「さあ?大方、僕に気付いたから避けたんじゃない?ヴァレリアは僕のことを警戒してるから。君も警戒してるのかい?」
「ハッ、そんなワケねえだろ。気にいらねぇがテメエが俺の埒外にいる事位は分かってるつもりだ。他の連中がどうかは知らねぇがよ。
そんなお前が態々俺らに分かるように面倒ごとを持ってくるかぁ、アホらしい」
ぶつくさと吐き捨てるようにヴィルヘルムは目の前に現れたアルフレートに対して言う。やれやれと肩をすくめながらアルフレートはそれに答える。
「君からの僕の評価はそんな風だったんだね。それじゃあ分かってると思うけど君が目をつけてた場所のスワスチカが開いたよ。大体予想は付くだろうけど君の気になってた彼も巻き込まれたんじゃないかな?」
「で、だから如何した?テメエが殺ったわけでもないだろ」
少しずつ苛立ちを見せるヴィルヘルムだが別段と気にした素振りは見受けられない。寧ろ少しだけ期待するように顔を歪ませていた。
「ふ〜ん、意外と気にしてないんだね。良かったら理由を教えてくれない?」
「あの野郎、曲がりなりにも俺と殺りあった。マレウスやあの小娘ども程度に黙って殺られるタマじゃねえだろ。これは俺の予想だが二割いや三割ぐらいで逆に喰らうんじゃねえか」
なるほど、とアルフレートは呟き独白する。これは選択肢間違えたかな、と。
「でだ、テメエは何の用で俺の前まで来たんだ?わざわざ血の臭いまで嗅がせて俺と今から殺りあいたいとでも言うきかぁ?」
「まさか、君は理解してるだろう。僕がスワスチカに興味が無いことも君と戦う気が無いことも」
「分かっちゃいるがだから如何した。それだけで信用するほど俺はお前の事を信用しちゃいねえぞ」
ギチリ、と音をならし臨戦態勢に入るヴィルヘルム。アルフレートも顕現させたばかりの自身の形成を行い対応できるようにする。
「取りあえず、喰らっとけッーー!!」
先に動いたのはヴィルヘルムだった。右手を構え無造作に放たれる大振りの一撃。
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