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私は、市役所の商工課を訪ねた。建築資金の融資を尋ねようと思っていた。対応してくれたのは、若い男の人で、言葉使いは丁寧なんだけど、どうも、経験が少なそうで、どうも、頼りなかった。
「で ナカミチさんは、商工会には加盟してないんですか?」
「はい 私は、どうも、相性が合わなくて・・」
「相性の問題なんですか 商工会に入っている方が、融資はすんなりいくんですけどね 保証の問題とか 事業主は、お父さんなんですよね あなたは、その娘さんなんですか? で、申し込むのは、あなたなんですか じゃぁ 新規開業という形となりますかねぇー 実績が全く無いんですよね そうすると、担保の審査とかありまして、遅れますよ お父さんじゃぁ駄目なんですか?」
「そうなんですけど、いろいろと事情があるんです」
「とにかく、資料をお渡ししますんで、読んでご検討ください。融資自体は、いろいろありますから・・。そのうえで、ご相談にのります」と、言って、何枚かの冊子を渡された。
私は、何か相手にされなかったような・・とにかく、面白くなかった。不親切なとこだなって思っていた。相手も不運だったのかな。出口に向かった時、男の人に呼び止められた。
「すみません。中道さんですか」
「そうですけど・・」
「あのぉー 僕は、観光課の広瀬と申します。以前は、商工振興課に居ましてね。今の話、ちょっと小耳にはさんだもので・・ 実は、僕は、中道さんが以前お住まいになった所に、住んでいるんです。以前、三倉と名乗って大学生が訪ねてきて、中道さんの行先を探しているんだとか・・。でも、お店を復活されたんですよね」
「そうです 昨年の秋から でも、その三倉蒼って、お宅にまで行っていたんですかー その人と 今 私 婚約しています」
「そうなんだ 会えたんだ 良かった あの時の学生がねー 彼はあの時、真剣だったんだよ あー、お店の方 妻と行こうとは話しているんだが、子供も小さくてね なかなか機会がなくって・・ 僕は、お父さんとも面識があるんだよ あの店を閉める時も、力になれなくて・・ 悔いが残っていたんだ 申し訳ない」
「そんなこと気になさらないでください 父は元気にやっていますから お店の方も、小さなお子さんも来てくださっていますよ どうぞ、ご遠慮なさらないで、気楽に寄ってください」
「ありがとう ところで、今 融資の話で来てたとか」
「ええ お店を大きくしたいんで、その資金に・・でも、何か複雑みたいって言われて・・」
「そうか、お店の評判良いの聞くよ 大きくするんだ わかった、僕は、今は観光課だけど、以前は商工の方に居たから、いろいろ有利なのを調べておくよ 又、連絡する」
私は、頭を下げて、よろしくと言って名刺を差し出した。
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