暁 〜小説投稿サイト〜
イベリス
第二十九話 報いを受けた人その十二

[8]前話 [2]次話
「なかったわ」
「じゃあお姉ちゃんにとっても」
「今そのお話聞けてね」
 それでとだ、愛も答えた。
「これは凄いお話聞けて」
「よかったって思ってるのね」
「そう思ってるわ」
「そうなのね」
「いや、このお話はね」
 愛はあらためて言った。
「こんなことはね」
「滅多にないっていうのね」
「ええ、流石にね」
「そうね、言われてみるとね」
「そうでしょ」
「ええ、あの先生に本当に怖かったの」
 実際にとだ、咲は愛に話した。
「学校で一番ね」
「怖かったのね」
「鬼みたいに怖くて」
 それでというのだ。
「通称鬼婆」
「そのままね」
「そう言われてたのよ、福島から来たともね」
「ああ、福島ね」
 そう言われると、とだ。愛も頷いた。電話の向こう側でそうしていることが咲にもわかった。
「安達ケ原ね」
「福島にあるのよね」
「そうよ、安達ケ原はね」
 愛もそうだと答えた。
「福島県にあるのよ」
「そうだったわね、私行ったことないけれど」
「そこにいたっていうのよ」
「実際のお話?」
「そこまではわからないけれど」
 それでもとだ、愛は咲に話した。
「実際に使ったいたお鍋とか包丁とか残ってるわよ」
「そうなの」
「棲んでいたっていう場所もね」
「残ってるの」
「洞窟みたいな場所にね」
「お家じゃないの」
「そうだったわ、それでね」
 愛はさらに話した。
「そこで人を襲ってね」
「食べていたのね」
「包丁で切ってお鍋で煮てね」
「物語じゃそうだけれど」
「本当にいたの?」
「和歌でも詠われてたわよ」
 愛は今度はこう話した。
「当時ね」
「そうなの?」
「ええ、安達ケ原にいるのは本当かって」
「そんな和歌もあったの」
「当時噂になっていたみたいよ」
「そうだったの」
「ええ、ただその先生そこまで怖かったのね」
 愛は咲にこのことをあらためて確認した。
「そうだったのね」
「学校一怖い人で有名だったのよ」
「その人が怪我をして痛みや苦しみを知って」
「優しくなったの、私も驚いたわ」
「そうよね、怪我をして自分の過ちを知る」
 愛の声は遠くを見るものになった、その声で言うのだった。
「それもまた人間ね」
「そうなるのね」
「許されないことをしても」
「人はそこから反省していい人になれるのね」
「そうね、アメリカのその人達といいね」
 愛はアール=ウォーレンやフォレスト大佐の話もした。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ