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イベリス
第二十九話 報いを受けた人その九
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「一人でお買いものに行った帰りにね」
「事故に遭って」
「この通りよ。もう一人で普通に歩くことは出来ないわ」
 咲に今度は自分の足を見つつ話した。
「杖がないとね」
「そうなってしまったんですね」
「あまりにも怒鳴って無理にやらせて罰が当たったのよ」
 ここでこう言うのだった。
「罪には罰がっていうでしょ」
「自業自得とか因果応報とかですか」
「それは世の中の摂理だから」
 それ故にというのだ。
「私もね」
「事故に遭われたんですか」
「そう考えているわ、けれど主人はその私にいつも優しくてくれて」
 罪を犯した自分にというのだ。
「子供も授けてくれたの」
「お子さんおられるんですか」
「男の子がね。六つになるの」
 今度は母親として語った。
「私はもうこの足だから教師のお仕事は出来なくなったし自分一人で満足に歩くことも出来ないから離婚してって言ったけれど」
「それでもですか」
「自分が足になるって言ってくれて」
 そしてというのだ。
「そのうえでね」
「一緒にですか」
「いてくれて」
「お子さんもですから」
「授けてくれたの、足が満足に動けないから」
 自分のことを言うのだった。
「邪魔だって思って離婚を切り出したのにね」
「邪魔ですか」
「ええ、足が悪いとね」
「障害があるとですか」
「そう思って離婚を切り出しても。主人の実家の人達もどの人もね」
「離婚する必要はないってですか」
「言ってくれて」
 そうしてというのだ。
「今も一緒にいてくれてね」
「それでお子さんもですか」
「凄くいい子なの」
 今度は息子のことを話した。
「まるで神様みたいな。私をいつも大切にしてくれる」
「いいお子さんなんですね」
「とてもね、それで私もわかったの」
「過去のご自身のことが」
「そして障害のこともね」
 このこともというのだ。
「負い目に感じてはいけないし差別することもね」
「いけないですか」
「そのことがわかったの」
「色々なことがわかったんですね」
「そうなの。だから」
 それ故にというのだ。
「私はこれからも過去の自分を反省して」
「それで、ですか」
「家族を大事にしてね」
「生きていかれますか」
「そうしていくわ、そして出来ることをね」 
 自分のというのだ。
「していくわ。今は歩く練習もしているの」
「そうですか」
「ええ、自分でね」
「大変ですよね」
 咲はその足を見て彼女を気遣って言った。
「そのことも」
「怪我をするまでは何でもなかったわ」
 歩く、そのこともというのだ。
「けれど今はね」
「やっぱり大変ですか」
「最初は何度も泣いたわ、満足に歩けないで。それで身体が悪い子に無理をさせることがどんなに酷いことかもわ
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