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レーヴァティン
第二百二十七話 会津若松城その七

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「決してな」
「しないっちゃな」
「奴隷なぞはな」
 英雄は忌々し気に言った。
「不要だ」
「そうっちゃね」
「幸い西の浮島でもない」
「今この世界には奴隷は存在しないっちゃ」
「俺もあいつもそんなものは嫌いだ」
 奴隷というものはというのだ、このことにおいて英雄も久志も全く同じ考えだ。それで今も言うのである。
「だからな」
「奴隷にはしないっちゃな」
「民は必要だが」
 しかしというのだ。
「それでもな」
「奴隷はいらないっちゃな」
「そうだ」
 まさにというのだ。
「だからそんなことはしない」
「そうっちゃな」
「あんなものはいらんとよ」
 香織も言ってきた。
「奴隷なんて」
「そうだな」
「太閤さんも最後までそうだったたい」
 豊臣秀吉は晩年多くの過ちを犯した、衰えがあったとも抑え役であった弟の秀長がいなくなったからだとも言われている。
「奴隷制は反対だったとよ」
「だから外に売り飛ばされて奴隷にされている者達を買い戻した」
「そうしたとよ」
 ただ反対するだけでなく実行に移したのだ。
「そうしたとよ」
「俺も同じことをしたい」
「若し奴隷がいたなら」
「そうする、だが民はな」
「必要たいな」
「そうだ、この世界には穢多や非人もいないな」
 そう言われている者達もというのだ。
「河原者もな」
「この世界ではそうたいな」
「かつてはいた様だが」
「なくされているたいな」
「この階級は奴隷ではないが」
 このことが決定的に違う、被差別階級ではあったが奴隷ではなかったのだ。
「しかしな」
「やっぱり不要たいな」
「そうした者達もな」
「民としたたいな」
「差別される立場でなくな、しかし」
 英雄は考える顔で述べた。
「ああした立場の者達がいることがな」
「秩序になる場合もあるたい」
「穢れが多いか」
 英雄は眉を曇らせて言った。
「これは獣を扱っているからか」
「その肉や皮を扱うたい」
「捌いてだな」
「その血や死でたい」
 それでというのだ。
「穢れているということたい」
「そうだな」
「だから穢多たい」
「そうなっているな」
「非人とされる人達もいるたいが」
「また違うな」
「非人は処罰で落とされることもあったとよ」
 そして赦されることもあったのだ。
「歌舞伎でそんな話もあったたい」
「そうだったか」
「桜姫であったとよ」
 桜姫東文章である、歌舞伎の名作の一つである。
「そこでも描かれているたい」
「そうなのか」
「そしてたい」
 香織はさらに話した。
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