疾走編
第三十六話 ダゴン星域の迎撃戦(前)
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ムラグが出る。タイムラグが少ないほど乗組員の練度は高いし、整備が良く行き届いている艦隊、という事になる。陣形の乱れ、という状況はここで発生する。戦闘が始まるとどのタイミングで指令が出て微調整を行うかが分からなくなるからだ。そして、旗艦の電算機の能力もこれに影響する。旗艦専用の大型戦艦があるのはこの為だ。千隻程度の分艦隊旗艦には大抵、指揮機能の能力強化を施されている標準戦艦が充てられる。正規艦隊になると分艦隊の規模も大きくなる為、分艦隊旗艦にも旗艦級大型戦艦が配備されたりする。指揮電算機の管制は司令部内務長のカヴァッリ大尉とそのスタッフに委ねられる。だから彼女達は大変な思いをする。長期戦になるとぶっ倒れる奴も出てくる…。
フォークがカヴァッリ少佐とそのスタッフ達の動きを興味深そうに見ている。今回に限り、司令の許可を得て見学させている。本格的に戦闘に突入したらそんな暇も無くなるから、今だけだが…。
あいつは本当に初陣だからな…。
「各艦、電算機管制に移行完了、ハウメアへの報告も完了しました」
「了解した。各艦に伝達、二一〇〇まで休息を許可する」
「はっ、伝えます」
「私も休む。君達も交代で休みたまえ」
「ありがとうございます」
司令がフォークを呼んで耳打ちしている、緊張をほぐそうというのだろう。フォークの肩をバチンと叩いて大声で笑いながら自室へ戻って行った。 そのフォークはため息をつくとこめかみをかきながら俺の方へ近付いて来た。
「少佐、こう言っては何ですが、待機の時間の方が長いのですね。戦闘配置の最中に休息時間を設けるとは想像していませんでした」
「人間は長時間の緊張には耐えられないからな。戦闘が始まってしまうと終わりが分からないから、休むなら今の内に、という訳だ。お前さんも休んでおいた方がいいぞ」
「いえ、大丈夫です」
「なんだ、まだ気にしているのか?…よし、俺なりの答えを教えてやろう」
参謀の役割は各カテゴリーで変わる。艦隊司令部の参謀なら、主に敵の意図、味方の状態や戦術運動に関する事を艦隊司令官に助言する。他人はこう考えていますよ、という事を司令官に知らせるのだ。
これが分艦隊の参謀になると、分艦隊単独で戦わない限り基本的には戦術面のフリーハンドは与えられないから、艦隊司令部から与えられた命令を正確に実行する為の助言をする事になる。艦隊司令官が何を考えているのか、それを実現する為には何が必要なのか…という事を主に考えねばならない。
「…という訳さ。シミュレーションでは見えてこない現実だよ」
「戦術行動ではなく、艦隊運用面に関するサポートがメインになる、という訳ですね」
「そうだ…と俺は考えているよ」
「得難い助言、ありがとうございます」
「助言という程の事でもないさ。お前さんは俺を越えるんだろう?慣れれば直ぐに
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