第七十四話 戴冠式
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「それと王太子妃殿下、先ほど連絡がございまして、ベルギカ号が海岸線を通過したそうにございます。王太子殿下はおよそ三時間ほどでトリスタニアの到着する計算になります」
「ありがとう、それまでにはこの書類を終わらせておくわ」
「御意」
「……それと、お義母様のご様子は?」
「今日も、陛下に付きっ切りでございます」
「お食事は採っておられるのかしら」
「家臣一同、王妃殿下の健康状態には一段の気を使っております」
「……わたしもお義母様のお気持ちは良く分かるつもりです。マクシミリアンさまにもしもの事があれば、わたしも平気ではいられないでしょう」
「……」
「お義母様の事、皆によろしくお伝え下さい」
「御意」
……
一仕事終えたカトレアは、王宮のバルコニーに出ると西の空を見上げた。
「お義姉様!」
先に来ていたアンリエッタが、カトレアの胸に飛び込んだ。
「アンリエッタ、先に来ていたのね」
「もうすぐお兄様が帰ってこられるのね」
「マクシミリアンさまが帰ってこられれば、お義母様も気を持ち直すわ」
「そうですね、お兄様が帰られれば、お母様もきっと……」
エドゥアール王の死で誰が一番変わったかと言えば、それはアンリエッタだろう。
本来なら母のマリアンヌと共に父の遺体に縋り付いて泣く事しかできなかったが、優しいカトレアの励ましで少しばかりの成長を遂げていた。
マクシミリアンが新世界に行ってからサボリ気味だった勉強も再開し、アンリエッタに王族としての気概が生まれつつあった。
王宮の意たる所では、家臣達がマクシミリアンの到着を今や遅しと待ち構えていた。
一方のトリスタニア市内は、エドゥアール王の死は伏せられている為、いつもの通りの賑やかさだった。
「見えられたぞ!」
『オオッ!』
歓声が上がり、西の空に30を越す竜騎士に守られた一隻のフネが現れた。
「あのフネにお兄様が?」
「そうですねアンリエッタ」
空中のベルギカ号はトリスタニア上空まで到達すると、スピード緩めてやがて止まり、そして一つの人影がベルギカ号甲板から飛び降りた!
「あ! 誰か飛び降りたぞ!」
家臣の誰かが叫んだ。
「お義姉様、大変!」
「ウフフ……こういう所は変わりませんね」
カトレアは可笑しそうに笑った。
夫婦の絆で分かるのか、飛び降りた人物がマクシミリアンである事をカトレアは察知した。
王宮へと真っ逆さまに落ちるマクシミリアンは、空中でクルリと一回転すると、杖を振るって『レビテーション』を唱え、カトレアとアンリエッタの居るバルコニーに降り立った
「ただいまカトレア。どうも恥ずか
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