Mission
Mission4 ダフネ
(1) ヘリオボーグ研究所正面玄関前
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移動のための資金と装備を揃えたユティたちは、まずヘリオボーグに向かった。マクスバードにいる「ユリウスを探っている人物」が特定できていない以上、会うべき相手がはっきりしているヘリオボーグを先に片付けておこうという方針である。
トリグラフの街を出て、トルバラン街道を抜けて到着したヘリオボーグ研究所。
曇天の下、佇立する巨大な研究施設は、ただならぬ空気に包まれていた。
「何があったんですか」
「ジュードさん! それが…」
ジュードが職員に事情を尋ねようとするのとほぼ同時、一人の男がぼやきながらやって来た。
「ダメだ。完全に警備システムを押さえられてる。俺一人じゃどうにもならな――」
――ごとん、と大きく心臓の律が狂った。
(分かってた、はず。ここで会うって本人から聞いて知ってたのに、動揺するのはおかしいでしょう。ここはワタシにとっては過去で、この人が健在なのは当たり前。でも、でも)
「アルヴィン!」
「おっと…こりゃまたいいタイミングで」
(ユティが壊したアルおじさまが、ユティの目の前で、立って、息して、しゃべってる)
首から提げたカメラの紐をきつく握りしめる。表情はみじんも揺らいでいない自覚がある。思い通りにならないのは首から下だけだ。
ユティはアルヴィンから状況を聞くジュードたちの輪に飛び込んだ。
「ルドガーって言ったっけ。これは、アルクノアのテロだ。俺、元アルクノアなんだけど、信じてくれるか?」
ルドガーとエルは顔を見合わせる。ジュードは「しょうがないなあ」と言わんばかりに肩を竦めるだけで、フォローはくれない。
「分かった。信じるよ」
「……なるほど。ジュードの友達って感じだな」
「アルヴィンはジュードの友達じゃないの?」
「友達だよ」
「……なーんか信用できなさそう」
「子供の目はごまかせないな――」
アルヴィンは後ろ頭に手をやって苦笑した。それでも彼が一抹の悲しさを露呈したのをユティは見逃さなかった。
「いいじゃない。信用できなさそうでも」
エルがぽかんとユティを見上げる。エルの表情は戸惑い、そしてユティへの反感へと移ろう。
「よくないーっ。すごく大事なことでしょ!?」
「ユティは信用できなそうで全然いい。だって、」
ユティは、これまた戸惑っているアルヴィンに笑いかけた。
「この人だから」
「……俺、今、元アルクノアっつったよな」
「知ってる。知ってて、それでいいの。ウソツキのアナタが、ワタシはいい」
アルヴィンはユティに探る目を向けた。ユティはカメラを持ち上げると、アルヴィンの表情が変わりきる前にシャッターを切った。
――カメラにはこんな使い道もある。
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