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旅行から帰って、しばらく、舜とは会えてなかった。なずなから連絡が来て、金曜の夜、美浜で会おうよと言って来た。
私は、会社を出て、直行して、お店のドァを開けた。まだ、お客は誰も居なくて、あの懐かしい顔が見えた。石積さんだ。
「お久し振りです。お元気そうで・・」と、メニューを出してきた。
「今日は、牡蠣のいいのが入っていますよ」と、言ってくれたが
「ごめんなさい。先週、食べに行ったとこなの」
「そうですか じゃぁ やっぱり、お肉かな」
「ええ さっぱりとしたお塩で それと、ビールがいいかな」と、オーダーした。
「ごめんね やっぱり、すずりの方が早かったか 急いだんだけど」と、なずなが入ってきた。
「私も、今着いたとこよ なずなも久分だよね」
「そうだね すずりもしばらく会わなかったけど、なんか色っぽくなったわね」
「ジョーダンやめてよー なんも、変わんないわよ」
「そうですよねー 僕も、一瞬 感じました」と、石積さんも言ってきた。
突き出しに柿とえのき、とびっこの和えたものを出しながら「何飲む?」となずなに聞いていた。
「私 ハイボールが良い」と、なずなが答えていたけど、この時、私は「あれっ」と思ったのだ。
「実はね 私、土曜日だけ、ここでお手伝いしているのよ」
「えぇーっ 何よ それ なずな どういう訳?」
「ちょくちょく 一人で飲みに来ていたのよ それで、お願いしてね」
「だけどさー どうなってんのよー あなた まさかー」
「うん 付き合っている ちょいちょいデートもしたわ」と、さらっとなずなが言った。
「ちょっと 待ってよ いつの間に そんなことに・・」
「だってさー すずり 煮え切らないからよ 先に・・ 駄目だった?」
「いいえ べつに・・私・・ でも、良かったわね うまくいったんだ」
「うん 押しかけみたいなものよ ねぇ 修一」
石積さんは、答えずに、調理をしながら、笑っていた。私は、残念な思いもあったが、でも、私が悪いんだ。はっきりしなかったから。あの時、お店の前を私がウロウロしていた時に、会えていたら、どうなっていたか。だけど、今は、舜への想いがあると自分に言い聞かせていた。
「それで すずりのほうはどうなの?」
「うーん ぼちぼちね」
「あぁ そうか 出来たのか― 良かったじゃぁない」
「何にも言って無いわよー」
「だって ふんいきが前と違うもの 変わったわよ ねぇ どんな人?」
「違うって ちゃんとしたら、なずなに報告するって」
「そうか 進展中かぁー 決まったら、教えてね」
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