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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜絶望と悲哀の小夜曲〜
圏内事件〜二人目の犠牲者〜
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顔を見せたまま、南の窓に向かってゆっくり後ろ歩きしていく。
「私、ゆうべ、寝ないで考えた。結局のところ、リーダーを殺したのは、ギルメンの誰かであると同時に、メンバー全員でもあるのよ。あの指輪がドロップした時、投票なんかしないで、リーダーの指示に任せておけばよかったんだわ。ううん、いっそ、リーダーに装備してもらえばよかったのよ。剣士として一番の実力があったのはリーダーだし、指輪の能力を一番活かせたのも彼女だわ。なのに、私達はみんな自分の欲を捨てられずに、誰もそれを言い出さなかった。いつかGAを攻略組に、なんて言いながら、ほんとはギルドじゃなくて自分を強くしたいだけだったのよ」
長い言葉が途切れると同時に、ヨルコの腰が南の窓枠に当たった。
「ただ一人、グリムロックさんだけはリーダーに任せると言ったわ。あの人だけが自分の欲を捨てて、ギルド全体のことを考えた。だからあの人には、たぶん私欲を捨てられなかった私達全員に復讐して、リーダーの敵を討つ権利があるんだわ………」
しん、と落ちた沈黙の中、冷たい夕暮れの風がかすかに部屋の空気を揺らした。
やがて、かちゃかちゃかちゃ、と小さな金属音が鳴り響いた。
音源は、細かく震えるシュミットのフルプレート・アーマーだった。歴戦のトッププレイヤーは、蒼白になった顔を俯け、うわごとのように呟いた。
「…………冗談じゃない。冗談じゃないぞ。今更……半年も経ってから、何を今更……」
がばっ、と上体を持ち上げ、突然叫ぶ。
「お前はそれでいいのかよ、ヨルコ!今まで頑張って生き抜いてきたのに、こんな、わけも解らない方法で殺されていいのか!?」
シュミットとキリト、アスナ、そしてレンの視線が窓際のヨルコへと集まった。
どこか儚げな雰囲気を纏う女性プレイヤーは、視線を宙にさまよわせながら、しばらく言葉を探すようだった。
やがてその唇が動き、何かを言おうとした───
その瞬間。
とん、という乾いた音が部屋に響いた。
同時に、ヨルコの眼と口が、ぽかんと見開かれる。
続いて、細い体が大きく揺れた。がく、という感じで一歩踏み出し、よろめくように振り返ると、開け放たれたままの窓枠に手をつく。
その時、一際強く風が吹き、ヨルコの背中に流れる髪をなびかせた。
ヨルコ以外の全員は固まって、動くこともできなかった。
その元凶は、ヨルコの着ている紫色の光沢のあるチュニック、その中央から突き出している黒い棒のようなもの。
それはあまりにもちっぽけで、瞬間、いったい何なのか解らなかった。
だが、その棒を包み込むように明滅する赤い光を認識した途端、戦慄が部屋中に走った。
それは───
投げ短剣
(
スローイングダガー
)
の柄だった。
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