Mission
Mission3 テミス
(2) マンションフレール302号室
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い希少価値の蝶なのだ。
「事実なら証明してみせろ。ユリウスを捕えれば真実は明らかになる。どうだ。やると言うなら、警察は私の力で抑えよう」
ルドガーが俯いて考え込む。やはりこういう筋書きになった。問題はこの筋書きにどこまで手を入れられるか。フォローしてくれる父親や大人たちのいない中で。
「ルドガー、まさかやるとか言わないよね」
「ユティ……?」
「ユリウスはルドガーに平穏無事に過ごしてほしい。時計は一回きりで終わらせて、あとはもう元の生活に戻ってほしがってる」
主目的が「ユリウス捜索」であっても、その過程には必ず分史世界破壊が付いてくる。ひとたび分史世界を壊したが最後、ルドガーの道は破滅確定だ。道筋を変えられるならここでルドガーを一切合財関わらせないようにしたい。
「ユティは兄さんが危ない目に遭ってるのを見過ごせって言うのか」
「見過ごして。ルドガーに追わせないためにユリウスは一人で行った。ユリウスはルドガーに助けてほしいなんて言ってない」
「……言ってないだけで、内心では思ってるかもしれないじゃないか。いくら兄さんだって全国手配されたんじゃ困ることも多いはずだ」
「思ってない。ユリウスはルドガーに助けてほしくない」
言い切って、ユティは息を呑んだ。
ルドガーの翠眼が烈火のごとき迫力を宿してユティを見下ろしてきたのだ。
(視線が人を殺すとしたら、こんな眼かしら)
心臓が不快な律で打ち始める。ヴェルとの初対面でも、ユリウスがビズリーに斬りかかるのを見た時でさえ、こんな反応は起きなかった。
分からない。何がここまでユースティア・レイシィを硬直させるのか、何がこうもルドガーの琴線に触れたのか。
「俺は兄さんの思い通りに動く人形じゃない」
ルドガーは顔を上げ、ビズリーに対してまっすぐ宣言した。
「分かった。兄さんを探す」
「――いい判断だ」
ユティは唇を噛んだ。規定事項とはいえ、イヤなほうに展開が転んだ。
「状況失敗――」
今回は完全にユティの負けだ。
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