第三章
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「タクシーは呼ぶがね」
「それでもですね」
「ここはですね」
「支配人がやってくれますね」
「任せてくれ。あの人のことはわかっている」
クレンペラーの人間性はというのだ。
「だからな」
「それで、ですね」
「ここはですね」
「支配人さんがですね」
「問題なくしてくれますね」
「爆弾でも扱い方があるんだ」
こう言うのだった。
「だからいいな」
「わかりました」
「ここはお願いします」
「ここで帰られたら厄介ですから」
「お願いします」
「そういうことでね」
こうしてだった、ここは支配人に任されることになった。
クレンペラーはタクシーが来るとそれに乗って劇場を後にした、だが。
すぐに戻って来た、そうして怒りが収まった顔で言った。
「リハーサルの再開だ」
「わかりました」
「それではすぐにはじめましょう」
「そうしましょう」
「そうする」
何もなかった様にリハーサルを再開し最後までして帰った、そして。
クレンペラーが帰ってから支配人は劇場の者達に話した。
「タクシーには劇場の周りを一周してね」
「そうしてですか」
「戻ってもらったんですか」
「劇場の前に」
「そうしたんですか」
「あの人は本当に激しやすいからね」
癇癪持ちだからだというのだ。
「だからね」
「一周してもらって」
「それで戻ってもらった」
「一周する頃には癇癪も収まっている」
「そういうことですね」
「あの人は爆弾だよ」
支配人もこう言った。
「女癖も毒舌も癇癪も」
「本当に凄い人ですね」
「ある意味において」
「音楽も素晴らしいですが」
「あの人格は」
「それがわかっているから」
だからだというのだ。
「今回はそうしたんだ」
「左様でしたか」
「それでリハーサルが続く様にしましたか」
「帰ると言われても」
「それでも」
「そうしたんだよ、それでね」
彼はさらに話した。
「また何かあったら」
「その時はですか」
「支配人がどうかされますか」
「その時は」
「何でもね、あの人との付き合いは長いから」
その為にというのだ。
「また何かあったら」
「その時はですね」
「再びですね」
「何とかされますね」
「そうさせてもらうよ」
笑顔で言ってだった。
支配人はそれからもクレンペラーが何かを起こすと対処した、そうして問題があっても最低限で済む様にした。
オットー=クレンペラーという人物については今も何かと言われている、クラシックが人間性を豊かにするという言葉が本当なのかと思わせるだけの人間であったことは間違いない。
女癖も毒舌も癇癪も何もかもが問題だった、それでだ。
周りはその彼と付き合う為に何かと考えた、これはそうした話の一部であ
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