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タクシーで一周
第一章

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                タクシーで一周
 オーケストラの指揮者であるオットー=クレンペラーは二メートルはある体躯と眼鏡とパイプが似合う理知的な顔立ちをしている、だがその外見とは裏腹に。
 異常なまでの女好きと毒舌で有名だった、それで彼を知る者は誰もが言った。
「あまりにも女癖が悪過ぎる」
「あれじゃあ性犯罪者だ」
「よく捕まらないものだ」
 そこまで女癖が悪いというのだ。
「不倫をして不倫相手の旦那さんに殴られたそうだな」
「少女に無理矢理手を出そうそしたり」
「何時捕まってもおかしくないな」
「あの女癖はどうにかならないか」
「しかもそれだけじゃないからな」 
 今度は毒舌の話になった。
「口が悪過ぎる」
「一体どれだけの人が犠牲になった」
「女癖も酷いが口も酷い」
「毒舌と言うがそんな甘いものじゃない」
「あれはもう爆弾だ」
 そこまで酷いというのだ。
「テロに近い」
「あんな口の悪い人間他にいない」
「付き合うのも大変だ」
「困った人だ」
「しかもこれで終わらないからな」
 何と女癖と毒舌だけではないというのだ。
「あの人の問題点は」
「癇癪まで持っているからな」
「こっちも爆弾だ」
「毒舌もそうだが」
「もっと言えば女癖もそうだが」
「癇癪も爆弾だ」
「女好きで毒舌で癇癪持ちなんてな」
 これだけ欠点があればというのだ。
「一緒にいるだけでも大変だ」
「困った人がいるものだ」
「クラシックの世界は変わり者が多いというが」
「人格もどうかという人も」
「思えばモーツァルトもそうだった」
 天才と言われた彼もというのだ。
「そしてベートーベンもだったな」
「ワーグナーもだ」
「マエストロはベートーベンもワーグナーも得意だが」
「マエストロは彼等にも負けていないぞ」
「指揮者としては素晴らしいが」
「人格はあまりにも問題がある」
「あれではナチスのプロパガンダに使われても不思議じゃない」
 彼がユダヤ系であることからも話された。
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