第三章
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ここでだ、三人のところにその鳥居の上からだった。
どすんと何かが落ちてきた、見ればそれは人の身体くらいの大きさがある人の頭を持ち小さな胴と短い手足にやたら長いざんばら髪の恐ろしい顔の何かだった。
その何かは三人に言ってきた。
「わしの家に入るでないわ」
「鳥居の上がお主の家か」
「左様、そこにずっと住んでいてな」
そうしてというのだ。
「神社に悪戯をする者を驚かせたり投げてだ」
「追い払っていたか」
「そうして懲らしめていた」
こう宗慶に話した。
「わしはな」
「そうであったか」
「わしの名をおとろしと言う」
妖怪は名乗りもした。
「覚えておく様にな」
「わかった、それでお主は神社に住むのは」
「元々は山に住むがな」
それでもとだ、おとろしは宗慶に答えた。
「鳥居や寺の山門も好きでだ」
「そこに住むか」
「そうした時もある」
「それで今この神社におるのか」
「そういうことじゃ、しかし見付かって興が醒めた」
おとろしは宗慶に面白くなさそうに述べた。
「山に戻ることにしよう」
「そうするか」
「うむ、ではな」
その大きな頭で言う、百姓の服を着た身体はその頭と同じ位の大きさである。
「これで帰ろう」
「山にか」
「もうここには来ぬ」
こう言うのだった。
「見付かったしまったからな」
「だからか」
「去ることにする」
実際にこの言葉と共におとろしは姿を消した、後は嘘の様に静まり返っていた。宗慶はそれを見て康慶と神主に話した。
「これで」
「はい、あやかしは去り」
「一件落着となりました」
「ですがそれでも」
「あの妖怪のしたことは決して」
「悪いことではない」
こう言うのだった。
「そのことは確かかと」
「ですな」
神主が応えた。
「この度は」
「はい、神社に悪さをする者を退け懲らしめていたので」
「それを思うと神社も助かりました、以後です」
「そちらで、ですか」
「気をつけていきます」
宗慶に強い声で答えた。
「あやかしの分まで」
「そうされますか」
「ここは」
「そしてこのことは寺にも伝えますね」
康慶も言ってきた。
「左様ですね」
「うむ、こうしたことがあったとな」
「それでは一件落着となりましたので」
「帰るとしよう」
「それでは」
康慶は確かな声で頷いた、そうしてだった。
二人の僧は神主に別れの言葉を告げて寺に戻った、そしてこのことを伝えた。
大和の国今の奈良県に伝わる話である、妖怪が神社に悪戯をする者達を追い払い懲らしめていたという。
妖怪といえば悪戯をするものだが逆に悪戯を戒める妖怪もいう、このことは意外と言うべきかそうした妖怪もいると言うべきか。面白い話だと思い紹介させてもらった。
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