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摩天楼のバースディ 
第一章

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                摩天楼のバースディ 
 ニューヨークはこの日も賑やかだった。
 そのニューヨークの中にあるシナゴーグでラビのイワノフ=ポグレノフは妻のリーザにこう言っていた。
「もうニコライも一歳だしね」
「お誕生日ね」
「そのお祝いをするけれど」
「信者さんの人達もお祝いしてくれるわ」
 妻は夫に話した。
「その時は」
「有り難いことにね」
「そうね、ただ」
「そう、私はラビだから」
 ユダヤ教の聖職者だからだとだ、イワノフは妻に話した。丸眼鏡で黒い目、まだ三十代で顔は若々しいが髪の毛は白くなっている。穏やかな顔立ちで背は一七六位だ。
「だからだよ」
「贅沢は出来ないわね」
「ラビが贅沢をしてわね」
「お話にならないわね」
「うん、けれどね」 
 青い目と少しふくよかな顔立ちとスタイルで蜂蜜色の髪の毛を長く伸ばしている妻に話した。妻の背は一六七位だ。
「やはりね」
「お祝いはしたいわね」
「可愛い我が子だから」
 それ故にというのだ。
「何とか」
「じゃあ質素に」
「そう、質素でいて」
 それと共にというのだ。
「嬉しい様な」
「そうしたパーティーにするのね」
「信者の方々もお呼びして」
 そうしてというのだ。
「一緒にお祝いしてもらおう」
「是非ね」
「ただ」 
 それでもとだ、イワノフはリーザにさらに言った。
「天気予報を見たら」
「ええ、ニコライのお誕生日はね」
「晴れるそうだから」
 それでというのだ。
「お外で開こうか」
「そうするのね」
「うん、どうせパーティーを開くのなら」
 それならというのだ。
「晴れていたら」
「お外でね」
「開きたいから」
「だからよね」
「そうしよう」
「じゃあ何処で開くべきか」
「お話しましょう」
 ラビの夫婦はこう話してだった。
 自分達の息子であるニコライの一歳のパーティーをどうしようか本格的に話した、そして信者の人達とも話したが。
 ここでだ、信者の一人でニューヨークに多くのビルを持ちかなり大きな不動産業を営んでいるチャーリー=ハンドレッドが提案した。彼もまたユダヤ系である。
「私が持っているビルの一つの屋上を使っては」
「屋上ですか」
「はい、そこを使って」
 そうしてというのだ。
「パーティーを開かれては」
「ビルの屋上ですか」
「ビアガーデンの様に」
 チャーリーは砂色の髪をオールバックにしている、灰色の目で濃い髭を生やした中年の男である。その彼の言葉だ。
「そうされては」
「屋上を提供してくれますか」
「場所を使う位は贅沢ではないですね」
「はい、それは」
 イワノフはチャーリーにラビとして答えた。
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