第二百二十五話 江戸城に兵をその七
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「巨人ですが」
「あのチームか」
巨人と聞いて英雄は眉を顰めさせた、見れば話す紅葉も周りにいる面々もだ。ここにいる者は皆西の浮島の面々も含めて巨人は嫌いなのだ。それは何故かというと巨人が悪事ばかり働き球界の盟主を僭称しているからだ。
「それは嫌な話だがな」
「はい、嫌な話ですが」
「巨人はそうしていたか」
「大雨の中練習をしまして」
昭和三十六年のシリーズ中のことだ、選手達は試合も練習もないと思っていたが首脳陣が強行した。これはあえて大雨の中で練習をして選手達にこの様な中で練習をしたのならと自信を付けさせて相手チームにその練習を見せて怖気づかせる為だったという。
「そして濡れたバットやボールをです」
「火で乾かしていたか」
「そうしていました、ドラム缶の中の火で」
「そうだったか」
「我々もです」
「そうすればか」
「火で乾かしつつ」
そうすればというのだ。
「鉄砲や大砲もです」
「使えるか」
「そうだと思いますが」
「わかった」
英雄は紅葉のその言葉に頷いた。
「では雪が降っている時もな」
「その様にしてですね」
「戦っていこう」
「それでは」
「工夫もな」
これもというのだ。
「大事だな」
「左様ですね」
「ではそうしたこともしてな」
そしてというのだ。
「戦っていく」
「寒さと雪に勝てば」
奈央は笑って話した。
「それでかなり大きいわね」
「そうだな、だが逆に言えばな」
「寒さと雪が今回は最大の敵で」
「その二つに負けるとな」
「敵に負けるより大きいわね」
「そうだ、だからな」
「備えは万全にしているわね」
「俺はよくも悪くもナポレオンではない」
久志は強い声で言い切った。
「あの様な天才的な資質はないが」
「冬に備えはするわね」
「ナポレオンは確かに凄かったが」
このことは事実だがというのだ。
「しかしな」
「それでもね」
「ロシア遠征では失敗を犯した」
「その寒さと雪を考慮しないで」
「フランスの寒さもかなりだが」
実は日本の冬よりもパリの冬は厳しい、セーヌ川が凍ってしまいそれでパリに麦が船で運べなくなりフランス革命の導火線にもなった程だ。
「ロシアはな」
「さらにでね」
「それでだ」
「ロシアの冬を考慮に入れなかったから」
「ナピレオンは敗れた」
そしてそれが失脚につながったのだ。
「そうなった」
「その轍は踏まないということね」
「だからな」
それでというのだ。
「俺はだ」
「冬の備えを怠らないわね」
「決してな」
「それではな」
「その様にする、では準備が全て整ってな」
「それからね」
「俺達も動く」
そうするというのだ。
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