第一話 幸せとは何かその十八
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「身の安全のことについては」
「何かあってからじゃ遅いから」
「子供だと攫われるし」
「女の子だと」
「年頃だとね」
「やっぱり攫われるし」
「攫われなくても襲われるでしょ」
夜迂闊に歩いていると、というのだ。
「だからよ」
「出歩いたら駄目なの」
「迂闊にはね。もう少し早く帰って来なさい」
「そう言っても皆と一緒よ」
「それでもよ。大体あんた何も持ってないでしょ」
母は一華にこうも言った。
「そうでしょ」
「それはね」
その通りだとだ、一華も答えた。
「バッグは持ってるけれど」
「その中にあるのはお財布とかタオルとかメイクの道具でしょ」
「他何か入れるの?」
「ブザーとか入れておきなさい」
「防犯に」
「その他にも出来たらね」
母は真面目な顔で話した。
「持っておきなさい」
「スタンガンとか?」
「他にも警棒とかもね」
「持ってるといいの」
「兎に角防犯のものは持っておきなさい」
「身の安全の為に」
「そうよ、皆と一緒でもよ」
夜歩く時はというのだ。
「お昼でも何かあるかわからないから」
「ここ日本だけれど」
「日本でもよ、いきなり通り魔だって出るでしょ」
こうした話は残念ながらある、歩行者天国で刃物を持って暴れた輩が何人も殺傷する様な事態が起こるのだ。
「そうでしょ」
「そう言われたら」
「だからね」
「ブザーとかスタンガンとか」
「警棒とかね」
「通り魔にはブザー意味ないわね」
「けれど普通の痴漢とかには効くわよ」
効果があるというのだ。
「だからね」
「いいのね」
「持っていてね、そしてね」
それでというのだ。
「身の安全は自分でよ」
「守ることね」
「そう、そしてね」
「そして?」
「本当に夜はあまり出ないの」
それが第一だというのだ。
「いいわね」
「近くのカラオケボックスに行くだけなのに」
「その近くに行くだけでもよ」
「危ないの」
「それで事件に巻き込まれたってあるでしょ」
母の口調は厳しいものだった。
「世の中には」
「そう言われたら」
「だからよ」
「最初からなのね」
「夜はね」
「あまり出歩かないことね」
「そうよ、だからいいわね」
くれぐれもというのだ。
「これからは」
「まあブザーやスタンガンは持っておくな」
「せめてそうしなさい、あと絶対に一人じゃ駄目よ」
夜に出歩くことはというのだ。
「これだけはね」
「それは私もしないから」
一華もこのことは心得ていた、年頃の女の子が夜に一人で出歩くなぞ治安のいい日本でも流石に危険だとだ。
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