第113話『空中戦』
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こまで弱気なのは珍しい。
……いや、それは晴登も同じことだ。風香の強さは、魔導祭を通して何度も見せつけられた。格の差を思い知らされ、今から試合だというのに足が竦んでしまう。
──しかし、終夜の言葉はそれで終わらなかった。
「それでも、勝たなくちゃいけない。辻の分は俺たちで取り返す。お前には負担をかけることになるが──勝ってくれ。そしたら俺も勝つ。あの人たちを乗り越えて、それで決勝に行くぞ」
「……はい!」
一見、一方的で無茶苦茶な約束。しかし、それが彼なりの覚悟を示したものだとわかり、晴登も気合いが入る。
この試合は勝たなければいけない。負けた緋翼のためにも、意気込む終夜のためにも、何より──今日に繋いでくれた結月のためにも、だ。
*
「まさか、こんなに早く君と当たることになるなんてね」
フィールドに上がると、向かいの風香から声をかけられる。
事実、本当に戦うことになるなんて、夢にも思っていなかった。
おかげでお互いの手の内はバレバレ。この勝負は情報戦よりも、単純な実力勝負となるだろう。
「よろしく……お願いします!」
「こちらこそ」
師匠と弟子。実力差は歴然だとしても、彼女の胸を借りるつもりで思いっきりぶつかりたい。
晴登は大きく深呼吸して……構える。
『それでは、試合開始!』
互いの手札が見えている以上、温存も小細工も時間の無駄。つまり、短期決戦だ。
「"疾風の──」
開幕からフルスロットル。速攻を仕掛けようと、脚に魔術を付与しようとしていた、その時だった。
「んぐっ」
瞬刻、衝撃が身体を貫いたかと思うと、気づけば宙に浮いていた。それだけでなく、フィールドから離れるように飛んでいる。その端からは、風香が仁王立ちしてこちらを見つめていた。
──彼女に突き飛ばされたと気づいたのは、その数瞬後だった。
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