第113話『空中戦』
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両翼でのなぎ払い。反応こそ間に合ったが、肝心の身体がついてこなかった。刀で防ぐこともできずに、モロにその一撃を喰らってしまう。
「そんな……!」
両翼に薙ぎ払われた緋翼の小さな身体は、フィールドの外へと向かって飛んでいく。
もう足は地面に付かない。衝撃で刀は落とした。フィールドに居残る手段が……ない。
「がふっ……」
ついに観客席の壁まで吹き飛ばされ、苦痛の声を洩らす。
『決まったぁぁぁ!! 辻選手リングアウト! 勝者、小鳥遊選手!』
ジョーカーの勝利宣言が頭の中に虚しく響く。
負けた。たった一瞬の油断がこの結果に繋がった。
勝ちを確信していた。だからこそ、少しだけ反応が遅れていた。
全部、自分のせいだ。
「う、うわぁぁぁぁん!!!」
緋翼は己の愚かさに涙を流すしかなかった。
*
「副部長が負けた……!?」
「最後の詰めが甘かった……いや、相手の勝ちへの執念の方が上だったと言うべきか」
フィールド外で座り込んで泣きじゃくる緋翼を見ながら、悔しそうに呟く晴登と終夜。本当にあと一歩のところだったのだが、舞の最後の力に押し負けてしまった。どうしようもない。
「やっぱりそう簡単に突破できる相手じゃねぇよな」
これが準決勝という舞台。いくら年齢が近かろうと、これまでの相手とは実力が違う。予想通りに事が進む訳がなかった。
『続いて2本目! 【日城中魔術部】三浦晴登選手VS.【花鳥風月】猿飛選手!』
「やっぱりか……」
陰鬱な気分の中、ジョーカーによる次なる組み合わせが発表され、晴登の顔がさらに強ばる。嫌な予想ばかりは的中するのだから運の悪い。
緋翼の相手が舞だった時点でほとんどわかっていたことだが、よりによって師匠と呼ぶ相手と当たるのは、さすがに苦しいものがある。
「三浦、自信ないか?」
「正直に言うと……全然」
「だよな。相手が師匠じゃ、縮こまっちゃうよな」
表情を歪めていると、意外にも終夜が共感してくれる。不思議に思って彼の方を見ると、彼は言葉を続けた。
「でもよ、それは俺も一緒なんだ」
「え?」
「俺が当たるであろう星野先輩からは、よく魔術を教わってた。いわば俺の師匠なんだよな」
昔を懐かしむように終夜は言った。彼に魔術を教えた人が誰なのか気にはなっていたが、まさか彼女だったとは。終夜が尊敬する訳だ。
「だから、お前だけじゃない。俺だってかなりビビってるよ。あの人の強さを知ってるからこそ、不安が拭い切れない」
見ると、まだ自分の出番でもないのに、終夜の手は震えていた。あの自信満々な終夜がこ
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