第一章
[2]次話
メモと一緒に
北アイルランドアンドリム州バリマネーでのことだ。
あるボランティア団体の施設の前にケースが置かれていた、それを見たシルヴィア=オーフェンは怪訝な顔で同僚達に話した。灰色の目でブロンドの髪の毛を後ろで束ねた中年女性で少し肉がついてきている。
「何かありそうですね」
「ああ、どうもな」
「ちょっと見てみるか」
「流石に爆弾は入っていないだろうな」
「テロするにしてもこんなところは狙わないだろうし」
同僚達もこう言ってだった。
ケースに近寄った、すると。
「ニャ〜〜〜・・・・・・」
「猫!?」
「猫だな」
見ればチャトラの猫がいた、見れば。
かなり痩せて怪我もしている、そしてだった。
ケースの中にメモ帳もあった、そのメモ帳を見てだった。
シルヴィアは同僚達とあらためて話した。
「飼い主の人が亡くなって」
「それでだな」
「この猫は家がなくなってか」
「助けて欲しい、か」
「飼い主が亡くなって家から出されて」
「元の飼い主の親戚の誰も引き取らなくて」
「それで、ですね」
そのメモを見て話した。
「この娘は」
「多分」
ここでスタッフの一人が話した。
「この猫は本当にずっと家の外にいて」
「誰も引き取らなくてな」
「見るに見かねたけれど飼えない人がここまで連れて来たんだろうな」
「私達なら何とかしてくれると思って」
「ここは実際に犬や猫を保護しているからな」
「新しい家族を探していますし」
「それでだな、じゃあこの子はな」
メモを見ると名前と性別も書いてあった、ボブといって雄だった。
「うちで保護してな」
「そうしてですね」
「獣医さんに診てもらって」
「痩せて怪我もしていますし」
「栄養を摂ってもらって手当てもしてな」
そうしてというのだ。
「そしてな」
「家族も探しましょう」
「絶対にな、ただな」
「ええ、どうせなら」
シルヴィアは残念そうに話した。
「うちに直接持って来て欲しかったですね」
「それはな」
その通りだとだ、同僚も残念そうな顔で頷いた。だが。
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