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渦巻く滄海 紅き空 【下】
五十三 招かれざる客
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せたナルを横目で見遣りながら呟く。

確かにシカマルが飛段を利用して角都の心臓をひとつ潰したかげで無事、ナルの術が発動できたのもあるが、それにしても…とカカシは【写輪眼】を発動させながら答えた。


ナルの【風遁・螺旋手裏剣】が直撃し、凄まじい爆風が周囲を襲う。
その威力や凄まじく、中心にいる角都がひとたまりもないことは一目瞭然だ。


針状に変形した極小の風遁のチャクラが角都の全身、それも細胞の経絡系全てを破壊してゆく。
【写輪眼】を以てしても見切れないほどの攻撃回数。
まるで毒のようだ、とカカシはナルの術を解析しながら驚愕する。


更に非常に高い威力である術はまるで小さな台風の如く、付近の木々をも根こそぎ打ち払ってゆく。
あとにはクレーターのように抉られた地面が残り、その中心へ角都が力なく墜落してゆくのが見えた。

「なんて術だ…」

驚嘆の眼差しでカカシはナルを見つめる。
付きっ切りで修行に付き合っていたヤマトが満足げに微笑んだ。


「終わったな…」
「…………」


一段落したとばかりに安堵の息をつくカカシに、再不斬は何も返さなかった。
クレーターの中心でボロボロになって這い蹲っている角都を見下ろす。


よろよろとなんとか立ち上がったナルを視界の端で捉え、彼女の成長ぶりに改めて感心したカカシは、「さてと、」と角都へ視線を投げた。
後始末をする為、クレーター内へ足を踏み入れようとしたカカシをヤマトが見送る。







彼らの注意と視線は、この時、角都に向いていた。
だから、気づけなかった。
いや、気づけたとしても遅すぎた。









「────強くなったね、ナル」


え、と声を出す暇もなく、背後からの衝撃に意識を失う。
ガクリ、と地面へ力なく激突するはずだったナルの身体は、気絶させた相手によって、やわらかく受け止められた。

「な…おまえは…!?」


この場に今までいなかった第三者の声音に、カカシとヤマトが一斉に振り返った。
いつの間にか、ナルの後ろに佇んでいた人物に彼らは驚きを隠せない。ただでさえ力を使い果たしたナルが気を失っている状況に、カカシとヤマトは冷や汗を掻く。


警戒態勢を取る二人に構わず、彼は気絶したナルへそっと囁いた。


「でも、その術はあまり使わないほうがいい。身体に負担がかかりすぎるからね」


仙術を使えば話は別だけど、とさりげなく助言しながら、彼は────ナルトは顔を上げる。


目深に被ったフードの陰で、ナルと同じ青の双眸が静かに細められた。
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