五十三 招かれざる客
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全てが計算の内だったのか、と絶句する飛段の耳に、酷く冷静な声が響く。
「そいつがお前の墓穴だ…わざわざ用意してやったんだから感謝して大人しく埋まってろ」
「ハッ、俺は死なねぇよ…身体がバラバラになって首だけになってもな。それに、俺には邪神様の加護がある」
爆薬を身体に巻き付けられても強がる飛段に、シカマルは嘆息する。
ふ、と周囲に視線を投げたシカマルの眼を追い駆けた飛段は、思いもよらぬ動物に眼を瞬かせた。
「し、鹿…?」
「…この森は火ノ国でも特別な場所でな。俺達一族だけが立ち入ることを許されている。お前が泣こうが喚こうが、此処にいるのは俺達一族と鹿だけだ」
助けは来ない、と淡々と告げるシカマルと飛段のやり取りを、まるで記録するかのように鹿が見ている。
その黒々とした瞳がどうにも不気味に見えて、飛段の身体が無意識にブルリ、と振るえた。
巨大な穴の上で宙吊りにされている飛段を前に、シカマルはライターをカチカチと鳴らす。
そのライターはアスマが愛用していたモノだ。
ふと以前、アスマと語った日々のことを思い出して、シカマルは顔を伏せた。
双眸を軽く閉ざす。
「おまえ…大名の件、断ったんだって?」
鳥の囀り声が響き、長閑な昼下がり。
芝生で寝転がっていたシカマルへ、師が問いを投げる。
アスマの質問に、腕を枕にしながら手持ち無沙汰に草を抜いていたシカマルは欠伸を噛み殺しながら、無言で応えた。
火ノ国大名名義の正式な依頼で大名の近衛官に欲しいというもので、守護忍十二士の入口とも言える。
いわば大出世の入口なのだが、それをシカマルは断ったのだ。
「外の世界を見るのも悪くないと思うがなァ〜。俺も守護忍十二士での経験があればこそ、今の俺があると思わないでもないからな」
寝っ転がりがら、煙草を吹かすアスマの隣で、シカマルは面倒くさそうに「俺は変わらないよ。これからも面倒くさいのは御免だ」と師を見ずに答える。
相変わらず面倒くさがりの生徒を横目で見遣って、アスマは苦笑いを零した。
だが「ただ、」と続けられたシカマルの言葉に耳を傾ける。
「なんていうか、チョウジやいのや…ま、ナルや…気になってしょうがねぇから里にいるだけっていうか…」
一名の名前を呼ぶ時だけ若干口ごもるシカマルを微笑ましげに横目で見遣って、アスマは笑う。
「お前にも火の意志ってのがあったんだな」
寝転がっていた状態から身体を起こしたアスマを、シカマルは見上げる。
座って木ノ葉の里を一望したアスマは、改めてシカマルを見遣った。
「この里を守ろうという強い意志がお前の中にもあるってことさ」
「
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