五十三 招かれざる客
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己の身体を縛る影の効力を見抜き、飛段はシカマルへ足を進める。
思った通り、チャクラ切れでもしたのか、膝をついて動かぬシカマルへ、飛段はにやり、と口角を吊り上げた。
「お前も邪神様を信仰していれば、救いの手があったかもな…」
蹲るシカマルへ、得物を振り上げる。
黒い棒だが、切っ先が鋭く尖った得物が暗い森にもよく映えた。
「今から邪神様を信じるならその改心に免じて…ってまァ、」
ふ、と脳裏に過ぎった金髪の己の邪神様を思い浮かべる。
彼を崇める信仰者は自分以外にはいらねぇな、と至極当然の考えに至って、飛段は前言撤回した。
「邪神様が許しても俺が許すわけねぇけどな、バァ──カっ!」
そして飛段は、得物をシカマル目掛け、振り落とす。
恐怖で慄くシカマルが眼を大きく見開いた。
その表情が一瞬で切り替わる。
「許してもらわなくても結構だぜ────【影寄せの術】! !」
刹那、辺り一面に張り巡らされた起爆札付きワイヤーの影が一斉に飛段へ集結される。
否、影で起爆札付きワイヤーそのものが引き寄せられ、飛段の身体を瞬く間に拘束した。
「な…なんだと!?」
今度は影だけでなく、物理的にも縛られた飛段が愕然とする。先ほどまで焦燥感と恐怖で震えていたはずのシカマルが余裕染みた笑みを浮かべたのも癪に障った。
「まだてめぇを拘束できるだけのチャクラは残ってるんでな」
あえてチャクラ切れに見せかけたシカマルにまんまと騙された飛段は、次いでシカマルが取り出したクナイに身構える。
だがてっきり自分へ投擲されるだろうと思ったクナイは、シカマルによってあらぬ方向へ投げられた。
いや、目印がさりげなく施されていた地面へ、そのクナイは狙い通り、突き刺さる。
「なにを…」
「黙って見とけ」
シカマルの不可解な行動に疑問を浮かべる飛段へ、素っ気なく答える。
すると目印の施された地面に徐々に罅が入ってゆく。
その割れ目は次第に広がり、やがて大きな穴となった。
そう、ちょうど飛段が拘束されている地点を中心に。
あまりの光景に、言葉を失った飛段は動揺を露わに、シカマルへ詰問した。
「どういうことだ…いつの間にこんな、」
穴を掘る暇など無かったはずだ。それもこんな深く、底が見えないほどの大きなモノなど。
飛段の問いに、シカマルはなんでもないように肩を竦める。
「前以て此処に仕掛けを準備していただけのことだ」
その返答で、ようやく飛段は気づいた。
我武者羅に飛段と角都を引き離したのではなく、自分を此処へ誘い込む為、己はシカマルの手の上で転がされていたのだと。
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