第三百四十一話 八条荘に帰ってその五
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「ないだろ」
「一切ないよね」
「新聞が安くなるか」
「ならないしね」
「だからな」
それでというのだ。
「巨人が勝ってもな」
「何ともないね」
「けれどな」
「阪神が勝つと」
「そうなるからな」
「日本にもいいね」
「何度も言うが巨人が優勝していいことあるか」
親父は軽いが確かな口調で言ってきた。
「何処かバーゲンにでもなるか」
「ならないんだよね」
「百貨店とかな」
「本当にね」
「例えば西武が優勝したらな」
それならというのだ。
「西武百貨店バーゲンするだろ」
「そうなんだよね」
「だから西武が強い時はな」
一九八〇年代から九〇年代前半のことだ、この頃はそれこそ毎年みたいに西武が日本一になっていた。
「毎年な」
「西武百貨店バーゲンだったんだね」
「そうだったんだよ」
「西武が優勝してもよかったんだね」
「八条リーグでも優勝したチームの親会社サービスするな」
「大々的ね」
それで優勝するチームの親会社は優勝になると大忙しになることが常だ。
「そうしてるね」
「けれど巨人はな」
「何もないね」
「あんなに優勝しても何もないチームはないんだ」
「だからだね」
「あそこは優勝しなくていいんだ」
僕にはっきりと言い切った。
「むしろ今みたいに万年最下位でな」
「いいんだね」
「何しろアンチは日本一多いチームだ」
今では一二球団で人気はダントツ最下位でだ、過去の一連の悪事からアンチは一向に減っていないのだ。
「だから負けるとな」
「それを見て喜ぶ人多いね」
「その人達の元気が出るからな」
だからだというのだ。
「巨人が弱いとな」
「いいんだね」
「こんないいことはないんだよ」
僕に笑って言ってきた。
「とはいってそうしたことはお願いすることじゃない」
「何処かのチームに負けろとか」
「マイナスのことはな」
「お願いすべきじゃないね」
「それは呪詛と変わらないからな」
「呪いを願ったらいけないよね」
「神社でもお寺でも天理教の教会でもな」
まさに何処でもというのだ。
「人を呪えばって言うだろ」
「穴二つだね」
「そんなことは願わないことだ」
「プラスのことを願うべきだね」
「自分のことでも人のことでもな」
そこはというのだ。
「そうすべきなんだよ」
「悪いことは願わない」
「ああ、いいことをな」
「願うべきだね」
「本当に人を呪うとな」
そうすればというのだ。
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