第一章
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シルクでなくミルク
東山桃花は間もなく交際相手の須郷俊と結婚する、だがここで彼女は両親に言った。
「私もあの人も贅沢に興味ないから」
「結婚式はするだろ」
「そうするでしょ」
「したいけれど」
それでもというのだ、やや茶色がかったふわりとした感じの髪の毛を伸ばし右で括っている。やや面長で細く長い眉で垂れ目でり口元は穏やかな感じである。背は一五八位で女性らしいスタイルである。
「それでもね」
「質素でいいのか」
「別に」
「そう思ってるけれど」
「ここは名古屋だからな」
「そういう訳にもいかないわ」
これが両親の言い分だった。
「あんたも名古屋で生まれ育ったしわかってるでしょ」
「名古屋はこうしたことは派手にやるぞ」
「だからね」
「質素にはね」
「だったらせめてウエディングドレスだけでも」
桃花は両親に言った。
「質素にして、シルクだと滅茶苦茶高いし」
「シルクでなくか」
「他の生地のドレスね」
「レンタルでね」
それでというのだ。
「やってね」
「それじゃあ私も」
桃花の双子の姉の桜花も言ってきた、顔立ちもスタイルもそっくりだが同じ感じの髪の毛を伸ばし上の方を団子にしている。
「それでね」
「桜花も同じウェディングドレスか」
「それでいいの」
「私も豊も同じだから」
贅沢には興味がないというのだ。
「だからね」
「名古屋だから式は派手にしてもか」
「それでもなのね」
「こうしたことにお金を使うのはわかってるけれど」
そうした土地柄だがというのだ。
「それでもね」
「二人がそう言うならな」
「それならね」
両親も頷いた、見れば父親はかつて鉄拳制裁で知られた中日ドラゴンズの監督によく似ている。母は娘達に遺伝を受け継がせているのがよくわかる顔だ。
その二人もそれならとなってだった。
レンタルのウェディングドレスを探した、そうして二人に話した。
「これでどうだ?」
「いいかしら」
純白のそれを見せた、それは豪奢なデザインであり結婚式場のレンタルだった。
「先に桃花、後で桜花だな」
「その順番で結婚するけれど」
「二人共これでいいな」
「これでいいわね」
「ええ、いいわ」
まずは桃花が答えた。
「安いしね」
「しかもデザインもいいから」
桜花も言ってきた。
「合格よ」
「そうか、じゃあな」
「このドレスでいくわね」
「それじゃあね」
「私達はこれ着させてもらうわ」
姉妹で両親に笑顔で応えてだった。
ウェディングドレスは決まった、それでまずは桃花が式を迎えることになったが。
ドレスを着た妹を見てだ、桜花は満面の笑顔で言った。
「素敵ね」
「ええ、一生の晴れ着だからね」
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