第二章
[8]前話
「そうだったのかよ」
「それで軍隊で肩を壊したんだ」
「それは知らなかったな」
「野球をすることも難しくなって」
「三度も召集されてか」
「何でも巨人に切られてな」
退団させられてというのだ。
「また戦地に行ったんだ」
「その戦地に行く港で会ったんだな」
「ああ、それで沢村さんを乗った船が見送った後隊長に言われた」
曽祖父は遠い目になって話した。
「あの人が大学を出ていたら三度も召集されなかっただろうってな」
「一回で済んだんだな」
「そうな、そしてあの人は」
「戦死してるよな」
「乗っていた船が沈められてな」
「じゃあその見送った船が」
「そうだったんだ、それでわしは戦争が終わってから思ったんだ」
茶を飲みつつ語った。
「沢村さんが大学を出ていたら」
「三度も召集されないでか」
「肩を壊さないで巨人から切られないでな」
「戦死しなかったか」
「そうなったかも知れないと思ってだ」
「俺達に大学に行けって言ってか」
「行かせてる、子供も孫も曾孫もな」
全員だというのだ。
「そうしているんだ」
「そうだったんだな」
「ああ、だからな」
「俺にも言ってか」
「行かせた、若し戦争になったら死にたくないだろ」
「それはな」
実際にとだ、赤枩も真顔で答えた。
「俺もな」
「わしの子供や孫や曾孫は戦争で死んで欲しくない」
「だからか」
「そう言っている、何時戦争になるかわからないだろ」
「その可能性はいつもゼロじゃねえな」
赤枩もこう考えていてこの答えを述べた。
「本当に」
「だからだ、お前も子供が出来たらな」
「大学にはか」
「行かせろ、軍隊でもやっぱり学歴見られるんだ」
「それでか」
「沢村さんみたいな話はもう勘弁だしな」
茶を飲みつつ曾孫に言った、そうしてだった。
彼はまた寿司を食べた、今度はイクラだった。赤枩もそのイクラを食べたが美味かった。だが美味いだけでなく深く苦い者も感じた。大学に合格してその寿司を食べたのだった。
大学に行けという理由 完
2021・10・21
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