第百十話 八神、都に来るのことその十
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「半殺しにしてからな」
「そこで半殺しかよ」
「大事な妹を渡すんだ、当然の権利だろうが」
「おい、それで死んだらどうするんだよ相手が」
「死んだらそれまでのことだろうが」
ビリーも負けていない。
「ついでに言うがリリィを悲しませたら本当に殺すからな」
「物騒な兄貴だな、おい」
「ああ、俺はそういう兄貴なんだよ」
「たまにはその棒しまえよ」
「棒なかったら何もできねえだろうが」
ビリーはそうだ。そんな話をだ。丈と睨み合いながら言いだ。
やはりだ。結論はこれだった。
「とにかく御前は二度とリリィに近寄るな」
「結局それかよ」
「ああ、そうだよ」
「この禿頭、ちったあ柔軟になりやがれ」
「おい、誰が禿だ」
丈が言った瞬間にだ。ビリーの額に血管が浮き上がった。
そのうえでだ。彼はまた丈に言う。
「俺は髪の毛あるんだよ。言っておくがな」
「じゃあ何でいつもバンダナしてんだよ」
「これはファッションなんだよ」
「それでかよ」
「そうだ。よく覚えておけ」
「あと俺のこれだけれどな」
アクセルが西瓜を食いながら言ってきた。自分の頭を指し示しつつ。
「剃ってるだけだからな」
「ああ、それは知ってるからな」
「わかってくれたらいいからな」
丈の返答にだ。アクセルは満足した。そんなやり取りからだ。78
まだだ。丈はビリーに言う。
「とにかくだな」
「リリィは渡さないからな」
「まだ言うのかよ」
「何度も言うからな」
「糞っ、何て頭の固い奴だ」
「そらちゃうからな」
張遼はビリーの側に立って言う。
「あんた、ちょっとあかんやろ」
「駄目だって何がだよ」
「頭がや」
身も蓋もない言葉である。
「駄目過ぎや」
「こいつ凄まじい馬鹿なのです」
陳宮もこう言う。
「とりあえず学校に行くのです」
「俺はちゃんと学校は出てるんだよ」
「嘘なのです」
「京と違うんだよ。俺はちゃんと学校は出てるんだよ」
「いや、その俺も」
ここで草薙達が来たのだ。そうしてだ。
草薙は真剣そのものの顔でだ。丈に対して言った。
「出席日数足りてないだけで成績は普通だから」
「じゃあ俺は違うってのか」
「悪いけれどな」
草薙は席を見つけて座りながら答える。
「丈さんはちょっとな」
「天下一の大馬鹿なのです」
また言う陳宮だった。
「人間頭も大事なのです」
「そうだよ。だからだよ」
ビリーは援軍を得て勢い付いていた。そのうえでの言葉だ。
「御前は絶対に駄目だ」
「じゃあ駆け落ちしてやるよ」
丈も負けていない。今度はこう言う始末だった。
「リリィちゃんと二人でな」
「ああ、そうしたらそれこそな」
「どうだってんだよ」
「タイでも日本でも追い掛けてな」
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