第三百四十話 戻って来てその五
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「毎日寝ることは寝ているけれど」
「それでもなのね」
「あまり寝てないよ」
睡眠時間自体はどう見ても短い。
「だから自分でも言ってるよ」
「長生き出来ないって?」
「太く短く生きるんだってね」
その様にだ。
「笑って言ってるよ」
「そうなのね」
「それで遊んでね」
そうしてだ。
「お酒も飲んでね」
「過ごしておられるの」
「そうなんだ」
うちの親父はだ。
「長生きするよりもね」
「楽しく?」
「そう言ってるよ」
本当に太く短く生きると言っている。
「それで傾いてね」
「生きておられるのね」
「そうだよ、けれど僕には長生きしろって言って」
「よく寝る様になのね」
「言ってるよ」
自分はどうあれだ。
「そうね、自分みたいには生きるなってね」
「覚悟を決めてなの?」
「遊んでるよ」
言うならだ。
「いつもね」
「そうした方なの」
「働いて遊んで」
そしてだ。
「生きているよ」
「外科医さんだったわね、お父さん」
「手術の腕が凄くてね」
まるでブラックジャックだとさえ言われている。
「手術は失敗しないんだ」
「それは凄いわね」
「うん、ただお金持ちの人からは」
「お金貰うのね」
「お金がない人に義侠心から手術をすることもあるよ」
その場合もある。
「けれどある人からはね」
「しっかり貰うのね」
「ある人からは貰う」
法外なものを出されてもだ。
「自分からは求めないけれどね」
「そうされているのね」
「そうした人なんだ」
僕の親父はだ。
「お金持ちがお金を出したらね」
「貰っておく人なの」
「だからお金はあるんだ」
お金持ちの人に頼まれて難しい手術を行うこともあるからだ。
「それで遊んでそれよりもまずは僕をね」
「育ててくれてるの」
「家にいる時はね」
それこそだ。
「ちゃんと育ててくれたよ」
「そうした人なのね」
「遊んでいてもお袋は忘れないし」
それも何があってもだ。
「それでね」
「義和のこともなのね」
「幾ら遊んでも家には帰ってきたし」
それこそどんな時もだ。
「それで僕のこともね」
「育ててくれたのね」
「今も生活費送ってくれてるよ」
僕はいいと言っているのにだ。
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