第百十話 八神、都に来るのことその九
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「これからはいいことをした方がいい」
「まあそれはリリィも気付いてるみたいでな」
「リリィ?」
「それは誰なのです?」
「妹だよ」
そのだ。彼の妹だというのだ。
「俺のな」
「そう。それが妹さんの名前」
「そうなのです」
「それでそのリリィが言うんだよ」
ビリーは酒を目玉焼きと一緒にやりながら話していく。
「人間真面目にやってこそだってな」
「それでビリーは今何をしているのです?」
「クリーニング屋だよ」
そこに務めているというのだ。あちらの世界ではだ。
「洗濯が好きだからな」
「じゃあそれを真面目になる」
「それが妹さんの為なのです」
「ストリートファイトや大会に出たりもしながらな」
それも続けているというのだ。
「で、あいつの花嫁姿も見たいと思ってるさ」
「だから俺がな」
呼んでもいないのに丈が出て来て自分を指差しながら言う。
「妹さんを幸せにする。楽しみにしていろ」
「なあ、ビリーちょっとええか?」
張遼もいる。その彼女が出て来た丈を横目に見ながらビリーに囁く。
「妹さんあんたそっくりか?」
「俺に似合わず清楚可憐で可愛い系だぜ」
「そやったらこいつは止めとくんやな」
こう丈を横目に見ながらビリーに囁くのである。
「いや、妹さんがどんな人でもな」
「こいつはだな」
「ああ、こいつはアホや」
丈を一言で表す張遼だった。
「いや、馬鹿って言うべきやろか」
「俺もわかってるさ。こいつにはな」
ビリーは丈を敵意と憎悪に満ちた目で見ながら話す。
「リリィはやれないからな」
「そや。絶対に止めとくんや」
「俺は人種的偏見はないつもりだ」
少なくともビリーにそうした悪癖はない。
しかしだ。それでも彼はこう言うのだった。
「けれどこいつだけはな」
「頭の中カラッポやからな」
「馬鹿には嫁にやれるか」
ビリーは強い口調で言い切った。
「それだけは決めているからな」
「何だよ。ひでえこと言うな」
丈はそんなビリーに反論した。むっとした顔になって。
「俺は浮気もしねえし悪事もしねえ。しかも無敗で収入だってあるぜ」
「じゃあ聞くな」
ビリーは敵意と憎悪に満ちた目のまま丈にこう言ってきた。
「太平洋戦争はじまったのは何年だ?」
「一九七五年だろ」
「一九四一年だよ」
すぐに言い返すビリーだった。
「御前の国に合わせて出した問題だったんだぞ」
「そうだったのかよ」
「じゃあワインは何から造るんだ?」
ビリーは今度はこの問題を出した。
「言ってみろ。何からだ?」
「米だろ」
「やっぱこいつアホや」
横で聞いている張遼も呆れてしまっている。
「後の問題は誰でもわかるやろ」
「あれっ、ワインって米から造るんじゃないのか?
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