第百十話 八神、都に来るのことその六
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「その借りをここでな!」
「返させてもらう」
「言いたいことはわかった」
関羽は二人の話を聞いたうえで静かに言った。
そのうえでだ。彼女もまた構えて言うのだった。
「しかしだ。それでもだ」
「私闘は駄目だっていうのかよ」
「どうしてもか」
「そうだ。ここで戦っても何にもなりはしない」
その巨大な得物を手にだ。関羽は鋭い目で言う。
「だからだ。今は双方収めるのだ」
「収めない場合はか」
「関羽殿が我等の相手になるというのか」
「そうだ」
いよいよだ。関羽の言葉が険しくなる。
「それならば好きなだけするがいい。遠慮はいらん」
「俺はあんたとは何もねえんだよ」
「私もだ」
二人は関羽のその目を見て言った。
「無闇に喧嘩をする訳でもねえしな」
「だからだ」
「今は矛を収めるか」
あらためてだ。二人に問うた。
「そうするか」
「ああ、今のところはな」
「引かせてもらう」
こうしてだった。二人はその場は引いた。そのうえで飲みに行った。その後に残った八神を見てだ。関羽は彼にはこう言ったのだった。
「御主もだ」
「無闇に戦うなというのか」
「そうだ。それは止めておくことだ」
「俺は自分からは戦わない」
こう言うのである。彼は。
「俺が殺すと決めた相手以外とはな」
「しかし今は」
「火の粉を払おうとしただけだ」
こう返すだけだった。関羽に対しても。
「それだけだ」
「そう言うのか」
「事実だからだ」
素っ気無くさえあってだ。八神は関羽に返す。
「それだけだ」
「では誰も何もしなければか」
「何もしない。そしてだ」
「そして?」
「御前にも言っておく」
鋭い目をそのままに関羽に告げたのだ。
「俺はここにいるが誰の下にもついてはいない」
「そして誰とも仲間にはか」
「なってもいない」
あくまでだ。彼は一人だというのだ。
「俺は今までもそうだった」
「そして今もだというのだな」
「これからもだ」
過去も現在も未来もだというのだ。
「俺は誰ともつるまず犬にもならない」
「そうだな。御主の目を見ればわかる」
八神のだ。その鋭い誰も寄せつけない目を見ての言葉だ。
「御主は狼だな」
「俺もまた、か」
「テリーやギース殿とはまた違う」
そうした狼だというのだ。
「まさに一匹狼だ」
「少なくとも犬ではない」
「その狼だからか」
「俺はあくまで俺だ」
「そうしてオロチと戦うのだな」
「殺す」
剣呑な言葉こそがだ。八神だった。
「それだけだ」
「その為にここに来たというのだな」
「それだけのことだ。これでわかったな」
「わかった。しかし御主は」
「今度は何だ」
「確かに人は殺すが」
そのことはだ。その殺気を見ればだ。関
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