昔からの知り合い
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奈美は彼のハサミを握る手を取り、そのまま肩にかける。
ソラが反射できない速度で、一気に抱え、投げ落とした。
「うわっ! すごい、これは驚いたな……」
可奈美としては、至近距離の投げ技を着地した方に驚くのだが、と心の中で思った。
ソラは可奈美から離れ、指で鋏を回しながら「へえ」と息を漏らす。
「君みたいな子供が、こんなことができるなんて。僕も人を見る目がなかったかな」
「いやあ、ハサミって近くで見ると剣に見えてきて、なんかワクワクしてきちゃって……」
可奈美が頭をかきながら言った。
だが、それはソラに唖然とさせるには十分だった。
「え? 何? 鋏を見て、剣だと思って、それでワクワクしてきた?」
さっきまで余裕の表情だった彼が、目を白黒させている。
それに、何となく勝てたような気がしてきた。
「あ〜あ、人質の人選ミスったなあ。もうちょっと別の子を人質にしておけばよかったな」
ソラは手をポケットに入れながら、その場でジャンプする。
それは、人間のものとは思えないほどの跳躍力で、建物を伝い上昇していく。
だが。
「逃がすか!」
『エクステンド プリーズ』
ハルトはすさかず伸縮の魔法を使った。
ゴムのようにしなる腕が伸び、即座にソラの足を捕縛する。
「ハルトさん!?」
可奈美が止めるのも聞かず、ハルトはその伸びた腕を容赦なく振り下ろす。
鞭のようにしなりながら、ソラを捕縛した腕は、彼を地面に叩き落とした。
アスファルトが土煙となるほどの勢い。そして、生身の人間が原型を残せないほどの衝撃音。
だが、可奈美がぞっとするよりも先に、ソラが動く方が先だった。
「痛いなあ……全く……」
むっくりと起き上がったソラ。服装は傷んでいるが、生身の体にも関わらず、ほとんど無傷に近いようだった。
「僕が人間じゃなかったら死んでいたよ?」
「……」
ハルトがソラを睨んでいる。
そして。
「いいよ……久しぶりに……やろうか」
ソラはそう言いながら、帽子に手を当てる。
すると同時に、彼の顔に不気味な紋様が浮かび上がっていく。
不気味を体現したようなそれは、瞬時にソラの全身へ行き渡り、その全てを大きく変質していく。
そうして現れたのは、緑の体。肩や全身の至る所に突起物が生え、あたかも生物的な脅威を感じさせる。
その存在。それが何者なのか、可奈美は知っていた。
「ファントム……!? 嘘……あの人が……!」
「久しぶりに遊んであげるよ。ハルト君。いや……ウィザード」
「来いよ……グレムリン!」
グレムリン。
西洋の、悪戯を好むと言われている妖精。それと同じ力を持った
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