第八話 プリズンブレイク in 黒鉄宮
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ょっと前に安全圏入り口の衛兵NPCに散々な目に遭わされた身としては、とても心に刺さるご指摘である。グラントは良い案が浮かばないことに頭を抱えながら、粗末で硬いベッドに寝転がり。そして隣にそびえ立つ仄暗い鼠色の壁をぼんやりと見つめた。
いくらフルダイブ型仮想世界とはいえ、現実世界でのそれのように凸凹や老朽の跡は一切確認できない。その辺りの再現度はこのアインクラッドの世界構築には考慮されていないのだろう、所詮壁は隣のエリアとの通行を阻む障害物なのであって……。
そう、「ゲームの壁」。
「……壁、か」
グラントは考えた。ここは推定圏内であるし、眼前の格子や側壁をこちらの攻撃によって破壊できるとは思えない。一応アイテムストレージを開いて、武器を取り出す事は出来るみたいだけど……そもそも盾じゃあ攻撃もへったくれもあったもんじゃない。
だが、である。先程も述べた通り、そこにあるのは現実世界の壁とは違う、あくまで仮想世界での遮断壁である。それはつまり既存のゲーム内なら確実に適用されるであろう「あのルール」が、ここでもまかり通るのではないか、という事を意味していて。
「……まあ、VRMMOでそれやった人の話なんて聞いたことないし……これはやってみる価値ありだぞ」
そう呟いたグラントは、泣く子も黙る気味悪い微笑みを浮かべていた。
それから、一時間近く経過して。
「さあ囚人ども、夕食の時間だ、食え!!」
こういう犯罪の匂いのするエリアのNPCだけあって、口調がなんというか汚い。その言葉のトゲに若干心を抉られながらも、グラントは好機到来とベッドから腰を上げた。
給食は一人ずつの様なので、どうやら隣の女性プレイヤーよりも先にこちらにNPCがやってきてくれた様だ。これもまた都合がいい。
「……で? 脱獄方法は見つかったんすかパイセン」
「ふふん、まあ見てなさいって」
グラントよりもはるかに長い時間というよりデスゲーム開始早々からずっと牢獄にこもっていた彼女としては、この独房を抜け出すなんぞ如何に無茶な事かをSAO全プレイヤーの誰よりも知っていると自負している。
なので次の瞬間、「何をする囚人! おとなしくしていろ!!」という罵声の後に響き渡ったグラントの悲鳴を聞いてもさほど驚かなかった。
だが。二度目、三度目……と同じ様な物音と悲鳴が連続して起きているのを聞いているうちに、流石の彼女も視線を隣の独房の方に向け始めた。いくら何でもしつこ過ぎやしないだろうか。
「ぐふぁっ!」 「んぬぉほぅあっ!?」 「いわぁぁくっっ!!」
カウントするにあの犯罪ギルマスパイセン、もう十回以上は同じ様に看守NPCに突っかかっているよ
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