第八話 プリズンブレイク in 黒鉄宮
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ドルームには俺含めギルメンは全員……いや初めはハルくんが買い出しに行ってたっけ)
事の始まりはハルキがズムフトの街の売店へと、ギルドの買い出し担当として今後の探索に使う回復ポーションを購入するために足を運び、特に事件もなく平和に帰ってきたその時である。例によって街の一角に立つNPCに話しかけてようやく我が家―――と呼ぶのは「グラント帝国」ギルドルームなだけにどうも癪なのだが―――に帰還した彼女が見た光景が、こちら。
「ねぇねぇトミィ氏よ? ハルくんまだ帰ってこないし、この本ちょっとは中見てもいいじゃん?」
『〜(???;)〜』
外出前まで読んでいた、以前たまたま商人プレイヤーから貰ったその本。
既存のアイテムではなくヒューマンメイドであるらしいそれは、しかし少女漫画チックな甘々プロットの小説であり。そもそもこのアインクラッドに製本系のスキルがあった事にも驚いた(アルゴ「……」)のだが、それ以上に彼女はこれまでの境遇上あまり読んでこなかった、その頭ん中お花畑な作風に不名誉ながら惹き込まれてしまっていたりしていて。
何と言うか、怖いもの見たさというのか。やはりハルキ、意外と乙女である。
……いや、スイーツ(笑)だったりして?
「……んグゥゥラントぉぉぉ…………?」
「あ、やべっ、違うんだ話せば分かんどおぅぅわっっ!?」
そんな彼女の煩悩の象徴が、今まさにグラントによって唐突に暴かれようとしていた。その事態にハルキは雷光の速さで彼の背後に駆け寄り、その首根っこを掴み力一杯後方に引き飛ばした。そして間髪入れずに、いきなり現れた彼女に驚き固まっているトミィをきつく睨んで黙らせる……なんて一見ものすごい怖い人になってるけどハルくん、内心ビックビクである。マジ危機一髪だぜ、と気を抜くとその場でへたり込みそうになる程である。
そんなんだからハルくん、すっかり忘れているのだ。グラントがいかにしつこく粘着質なキモ男であるかという事を。
「……すきアリィィィっ!!」
背後で倒れていた筈のグラントは、しかしハルキが振り返った時にはもう起き上がっていた。そして今まさに彼女のすぐ横をすり抜けて、机の上のお花畑ブックに手を伸ばそうとしていたのだ。
「なっ……こらぁぁっ!?」
こうなってはもう緊急事態、エマージェンシーモードである。ハルキは思わず剣を抜き、刀身の腹でグラントをすれ違いざまに引っぱたこうとする……圏内ではある、たしかに圏内ではあるけれど、ハルくん。
だがやっぱり、グラントもおかしな奴だった。彼はどうやらそんな彼女の暴挙を読み切っていたようで、既に左手にいつも使っている愛用の盾を実体化させていたのだ。そしてそれを自身に迫る剣に向けて掲げ
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