第七話 「燕返」対「虎切」
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「……まさか」
グラントは聞いていた。にっくきキリト(と怖いアスナさん)によってもたらされたエルフクエストの情報によると、ベータテストには無かったルート分岐により生還した黒エルフの女騎士は、自らプレイヤーのたむろす主街区にまで足を運ぶことがあるくらいには、NPCにあるまじき思考、行動の柔軟性があると。
加えて彼女の纏うマントには、「隠蔽スキル」を発動させる何かしらのオマジナイが付けられているとか……。
「えーと、キズメルさん、だっけ?」
「おや、ばれてしまったか」
その場にいた人間は全員固まった。
なにせ先程まで完全に何もない、誰もいなかったはず(否、実際はそこにずっといたという事になるのだが)の空間、トミィの真横の中空が文字通り裂けて、その隙間から一人の人間、いやダークエルフが姿を現したのだから。
「人族の使う剣術とはどのようなものか、先刻助けてもらった時から少々気になっていてな。様子を見に来たのだが……いやはや、なかなかの戦いだった。無論、我がエンジュ騎士団の実力にはまだまだ及ばないがな」
「あ……ああ。お褒めにあずかり光栄だよ……」
周囲からの驚きの視線をものともせずに、キズメルはハルキにそう語りかける。だが極めつけはここからだった。
その女騎士は問題の男、オルスに向き直ると、如何にも自然に話し始めたのだ。
「※×○%☆♭#▲$、■♭&□%$○☆:?」
推定、オルスの母国語で。
結論から言えば、外国人プレイヤーとの会話の架け橋を担っていたのは「NPC」であった。
彼らはどうやら、話しかけられた言語が世界中のどの言葉であるかを認識して、同じ言語で返答をするようにプログラミングをされているようなのだ。そしてそんなNPC―――NPCならばどこの誰でも良いようである、後に検証された―――の前に異なる言語の持ち主を複数人連れてきて「通訳」を要請すると、それ以降彼らのウィンドウの設定画面に「翻訳」と書かれた、相手の言った言葉を翻訳した文章をサブウィンドウに表示してくれる便利機能が追加される、というカラクリだったのだ。
グラント達は思った、茅場は、間違いなく、鬼だ。クッソ鬼だ。そんなのわかるわけないだろ。
とにかく、何はともあれグラント達は以上の経緯から、キズメルを通して金髪グラディエーターことオルスとの会話手段を得ることに成功し、無事彼をギルドに迎えることが出来たのだった。
そしてこれは余談になるのだが、やっと理解できるようになったオルスの言葉、彼が翻訳機能を使って初めて放った言葉が、
「ハルキ先輩パネェっス! マジ侍ってカンジっス、いやマジで」
……だ
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