第七話 「燕返」対「虎切」
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「……どーするよ、これ」
何かが、おかしかった。
というのも、大真面目にこの浮遊城アインクラッドを攻略しているキリト達とは違って、奴らはここ数ヶ月はギルメン集めという体で色々と大暴れをしている訳であって。
そんな毎日の中で半分呆れた様な、情けない声が聞こえることなんてそう珍しいことではない。そしてその中身は大体……いきなり突拍子もない事を口走り始めるグラントに対する、ハルキの呆れ文句なのだが。
確かに今回も、ある事案に対する呆れ文句、あるいは困り文句である事は間違いなかった。現にハルキは今、また面倒なことに巻き込まれたなと物憂げな顔をしている。
……では、一体何が違うのかというと。
「俺に聞くなよ、グラント」
そう、初めのぼやきはハルキではなく、トラブルメーカー側である筈のグラントが発したものだったのである。
順を追って話そう。
時は2023年。年明けから時が流れ、攻略組がいよいよ今日中に第二十八層迷宮区を制圧すべく画策している一方でグラントは、しかし上記の通り未だにギルメン集めに奔走する憂き目に遭っていた。
というのも、トミィを見出すのにも使ったアルゴのリストには、まだまだ多くのはみ出し者プレイヤーの情報がてんこ盛りなのである。流石アインクラッド一の情報屋が書くだけはあり、その主な活動地点や外見の特徴など事細かく記載されていて、これを最大限に活用するほかないと考えたギルドマスターは、益々トッププレイヤーとの差が開いていくのをひしひしと感じながらもひとまずはこっちに集中しようと決めたのである。
だが、それではその活動が成功したかというと、笑ってしまうほどに上手くはいかなかったようだった。まずギルド名を口にするだけで相手は眉をひそめ、そして目の前の落武者男が武器を持たないガードホリッカーであると判明した途端に、何かしら理由をつけて話を無かったことにされてしまうのだ。
『だから言ったろ。せめてギルド名は頭文字を取ってEOTJTKUDUGってことにしろって』
『いやそのE……も大概じゃね? 絶対覚えられないやつじゃん』
そんな会話も一度はなされたのだが、そもそも自分の付けたギルド名に誇りを持っちゃってるグラントにはまるで意味がない。マジで裸の王様である。可哀想に。そしてハルくんも何と言うか絶妙に才能がない。
でも、今度のは当たるかもしれないヨ。第三層ズルムトの街にて再度遭遇したアルゴは、そう告げた。因みに彼女はこの層から始まる一大キャンペーンクエスト、通称エルフクエストの情報を初めてこの街を訪れる初心者プレイヤーに広めるべくやってきているのだという。
『当たるってどういう事? 遂に俺のネーミングセンスを理解でき
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