第六話 ギルクエ? なにそれ? おいしいの?
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「……やった」
ハルキは茫然としていた。
本当に出来てしまった。初めは何を馬鹿な事をと諦め半分で乗ってみた作戦が、しかし成功してしまった。現時点で「グラント帝国」ギルメンでカーソルがオレンジなのはリーダーのグラントを除くハルキとトミィの二人であり、そのうちのトミィが遂に圏内へと辿り着いてしまった。
(でもこれって、問題だよな)
そう、この実験の結果を単なる達成感だけで味わってはいけない。それはつまり、オレンジプレイヤーが圏内に侵入する事が不可能ではないという結果なのだから。
この事はなるべく早く、攻略組や中層プレイヤー達に知らせるべきだろう。そしていざ犯罪者プレイヤーが今回のように何らかの方法で圏内に紛れ込んだ時の為に対策を練らなければ……。
「ひゃ、ひゃったねふぁうふん、うぁくぁうぁふぇふぃふっふぇうぃっふぁふぇふょ」
「取り敢えず黙ってようか、グラント」
どうやら先程の激突で相当意識を持っていかれたようであるグラントをハルキは無慈悲に黙殺した。正直何を言っているのかもさっぱり分からなかったが、どうせ調子のいいことを言っているのだろうことは明白だからである。
というかここで調子に乗せると後々とんでもないことを言い出しかねない、とハルキに思われてしまっているあたり、グラント氏残念である。
(……まあでも、今回の作戦は大したもんだったかな)
それは認めざるを得ないのかもしれない。何せ自分一人では奥の手を使ってもなお突破できなかったあのNPCを、パーティーメンバーそれぞれの特性や第二層のフィールドにポップするmob……そのような多面的な要素を組み込むことによって見事突破したのだから。
だが、そんなハルキの密かな関心も、次の瞬間には一気に吹き飛んでしまう事になるのだった。
「わ、わわっ!?」
「ふぁりゃ? と、とみぃひゃん?」
突然、ハルキとグラントの間を通る銀色の風。まさしくトミィであるその影が、せっかく圏内へと入れたというのに逆にフィールドへと猛撤退したようだった。どういうこと、と二人はトミィがつい先ほどまでいた筈の、村の方を向いて。
二人は、目を点にした。
「世の理を破り、村へ攻め込んだ咎人め!! 今こそ我々、『自警団』が成敗してくれん!!」
「……ねぇ、グラント」
「知らなかった。いや流石に知らなかったなあ」
先ほどハルキが剣を交え、トミィが振り切ったあの衛兵NPCにそっくりな顔、いで立ちをしたNPCが目測十人近く、こちらに向かって鬼気迫る勢いでなだれ込んでいるのである
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