第六話 ギルクエ? なにそれ? おいしいの?
[8/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
飛んだ。
「ようし! こんのストーカー牛め……思う存分、突っ込んでくるがいい!!!」
そしてハルキが牛の突進経路から逃れたのを、また彼女の目の前にいた衛兵NPCがその経路上にいることを確認すると、グラントは走るのに邪魔だった為今まで収納していた盾を手早く実体化させ、牛に向かって振り向き翳した……その結果。
「くたばれえぇぇ!! チート衛兵NPCがあああぁ!!!」
……チートというのはあくまでプレイヤー側のするシステム的な不正行為であって、NPCがチーターであるなんてことはまずありえない訳だがそんな事はグラントにとってはどうでもいい、というかその手の誤解多くないかいグラント。ギルクエといい。
とにかく、怒涛の勢いで猛進しているその巨大モンスターは、遂にギルクエの目標である衛兵NPCごと、グラントに向かって突っ込み……そしてタランの村入口の、石で作られたアーチに物凄い音を立てて大激突した。
「ぐええぇぇ……」
という何やら断絶魔の様な声がハルキの耳に届いたような気がしたが、きっと気のせいである。
でもここまで来たのなら仕方ない、作戦の最終段階をクリアしてやろうじゃないかと、彼女はありったけの声で、ここまで出番のなかった新人……疾走スキルの使い手であるトミィに向かって叫んだ。
「今だトミィ、走れぇぇぇ!!」
今度はトミィはハルキにメッセージを送る事は無かった。
その代わりに彼は足を陸上のスタンディングスタートの様に曲げ、足首からつま先までをライトエフェクトによって光らせた。それが疾走スキルの発動モーションである事をハルキが悟ると同時に、トミィは弾丸のように駆け出した……その、アーチのど真ん中に向かって。
流石、ハルキでさえまともに視認できない程のスピードの持ち主である。彼女が、あるいは衛兵NPCと共にアーチでぐっちゃになっているグラントが「いっけー!!」と声援を送る暇もなく、トミィは次の瞬間にはあと一歩で圏内という所まで進んでいた。
これには流石の衛兵NPCも焦ったようだった。目の前の巨大牛を一突きで撃破すると(!?)、先程のハルキとの対決で発揮した素早さをもって、一瞬でトミィの侵攻を防ごうと移動したのだったが。
「こぅら行くんじゃねぐっはぁぁっ!!」
とっさの判断で、グラントが共に牛に潰されていた衛兵NPCの足を引っ掴んでいたのである。もちろんその程度ではその最強衛兵を止めることなど出来やしないのだが、彼がそうして掴んだ分、敵の移動がコンマ何秒か遅れた。
そして、その一瞬の間はトミィが衛兵を振り切って圏内に侵入するのに十分な時間だったのだ。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ