第六話 ギルクエ? なにそれ? おいしいの?
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いるんだっけかと状況を再確認する。一応グラントの作戦によると彼にはこの後の重要な役目があるので、最後まで彼にヘイトが集まらないようにときつく言われているのだが。
ジリ貧である。分かっていたとはいえ酷いジリ貧である。せっかくハルキが自力で編み出した秘剣もシステムの暴力の前に敗れ去ってしまい……。
「別に敗れてはいないけどな!! くそっ、何なんだこいつ……!」
「破れてないって、何がさハルくん!?」
さて、そしてここでようやく真打(?)グラントの声が。先程まで勇ましく最強のNPCと渡り合っていたハルキも、ようやくこの役目から解放されると歓声を上げて、声のした方向へと振り返る。
「遅いぞグラント!! これ終わったら夕食おごっても…ら……」
そして、そこで言葉を止めた。
「……何してんのグラント」
そう、よく耳を澄ませば、もっと早くハルキもその異常な事態を察知出来たかもしれなかったのに。
辺りにはゴゴゴゴゴという謎の地響きが轟いていたのである。それもそのはず、ちょうど主街区ウルバスの方向から鬼の形相でこちらに全力疾走しているグラントがいるのだから……じゃなくて。
「な、なにをかくそう、これが俺の言った『隠し味』なんだぜってしんじゃうぅぅぅぅぅぅぅ!!??」
もちろん地響きはグラントによるものではなく。
その背後、今にもグラントの背中を突き飛ばそうと追尾爆走している、とんでもねぇアイツが起こしているものだった。
「トレンブリング・オックス」。肩までの高さが二メートル半に達する、第二層特産の巨大牛型モンスターである。見た目通りの耐久力と攻撃力もさることながら、この巨大牛の最大の特徴はプレイヤーへのターゲット時間、そして追尾距離が他のモンスターに比べると圧倒的に長いところにある。
このトンデモ牛が比較的ウルバス近郊を徘徊している事が多いことをベータ時代の知識として持っていたグラントは、その異常なほどの追尾性を利用して今回の衛兵NPC突破に利用できないかと考えていたという訳である。そして数分探して見つけたその牛に散々追い掛け回され、たまにもろに激突を食らいながら、何とかここタランの村前まで連れてきたのだった。
「ハルくうううん!! 全力で、横に、飛んでええええっっっ!!!」
「なっ!? こっちくんなって……だあぁ! どーしてこうなるんだよぉぉぉぉ!!!」
ラストスパートと言わんばかりにステータスの許す限りのフルスピードでこちらに向かってくるグラントにそう告げられたハルキは、今度もまた奇天烈なノリに巻き込まれたことを本気で恨みながら……全力で、横に、
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