第五話 天上天下唯我独(以下略)
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果、殆ど動くことさえままならない状態になってしまったのだという。
これではクエストどころか移動すら出来ないと焦っている時に発見したのが、SAOに存在する無数のスキルのうちの一つ、「疾走」スキルだった。
重量制限などに影響されずに一定距離を素早く走る事の出来るこのスキルは、トミィ氏にとっては救済同然のものであり。思わず衝動で全スキルポイントをそこに振り込んだ結果……あの、尋常ではない速さを手にいれることは出来たのだが。
「まあ、あくまで『一定距離を速く走る』スキルだしねぇ。止まりたい時に止まれるわけじゃないし、移動には向かないよねぇ」
そう、自分が止まりたい時に止まらなくなってしまったのである。その結果、スキルを使って動いたら超特急、使わなかったらカタツムリスピードという謎の両極端フットワークが完成してしまったというのだ。
これまでも通りすがりの人々に助けを求めるため何度か接近しようと試したのだが、その度に距離感覚も掴めないままとんでもねぇ速度で詰め寄ってしまうが為に目を付けたプレイヤー全員に逃げられてしまい。
「そりゃ、オレンジにならない訳だよ。そもそも襲う気すら無かったんだから。っていうか、そんなんじゃ武器系のスキルもろくに上がんないでしょ」
さすが同類グラント様。よく分かってるー。
確かに疾走スキルにも振り過ぎてしまったトミィ氏は、今に至るまでいわゆる「基本技」と呼ばれる初歩ソードスキル(片手直剣で言うところの「スラント」「バーチカル」「ホリゾンタル」)しかろくに使えないらしい。というかそもそも自分の速さに合わせて武器を振ることすら出来ないとか。
訂正。それもうグラントより酷いんじゃね? というかSTRに振り過ぎたって言う時点でもう少しビルド慎重になりなさいよ。
「ーー。ーーーー。」
「……あと、その声の小ささはどうにかならないかなぁ……」
実に変なプレイヤーである。これまで話して来た身の上話に加え、声が滅茶苦茶小さく会話が成立しない。グラントがそのヘルメットに顔を近づけて、漸く微かにひそひそ声が聞こえるというレベルだ。最もヘルメットを取って素顔を見せない時点で表情も見られず、ほぼほぼコミュニケーションは成立していないのだが。
「ふぅ、何はともあれトミィよ、お前さんの評判はあんまり良くないみたいだからなぁ……このまま何事も無かったかのように街に戻って暮らすのは無理というものよ。
そこで提案があるのじゃが、うちのギルドに……ねぇハルくん怖い顔しないで」
とっても怒っています。それもそのはず、このデスゲームにおいて自分の命を守ってくれる装備に親友同然の愛着を持つプレイヤーは多く、そして特にハルキのような剣一本で頑張ってる人(他にはそんな
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