第五話 天上天下唯我独(以下略)
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を前に掲げて。
「……来た! グラント左に三歩半動け!!!」
「ほいきた……ぐぇっ!?」
ハルキの鋭い声、グラントの汚い悲鳴。
……何があったかというと、限界まで集中したハルキが、視界にその銀色の影を認めた瞬間にグラントに指示を飛ばし、そして彼がそれに応じて指定された場所に素早く移動して。
かと思ったら、ちょうどその謎のプレイヤーに激突してしまい、あっという間に後方に吹っ飛んでいってしまったのだ。
「お、おい、グラント!?」
一瞬のその出来事に慌てて盾男の飛んで行った方向に振り返るハルキ。
……しかしそこは流石のおバカキモ盾男である。彼女の視界の先では、見るに堪えないむさ苦しい光景が広がっていた。
「つ、捕まえたぞゴルァ……大人しくしなさいこのはぐれきんぞ君め」
数秒前の激突によって派手に地面に倒れこんだグラントが、しかし一人のプレイヤーを四方固めでもするかの様に押さえつけていた。どうやらシステムはあの衝突を相手側の攻撃と判定した様で、グラントのカーソルは未だグリーンのままであった。
一方、たった今オレンジ化したらしい相手のプレイヤーは予想通りというか、全身を金属系の鎧装備で包んだ推定男だった。いや流石にこれ以上性別詐欺は致しません。多分。盾以外は比較的軽装であるグラントとは対照的に、その男は頭までフルフェイスのヘルメットをしていて、まるで顔が分からないが、唯一自由な右手をぱたぱたと動かして、助けてくれとでも言いたそうな素振りを見せている。
だが、ハルキの恨みはそんな事では晴らされなかった。怖いを通り越して禍々しいオーラを身体中から発しながら詰め寄るが、そんな彼女にグラントは自分の盾を投げてよこす。
「……なんだよこれ」
「キリトが言ってたろ?盾で相手殴ったってダメージ入らないって。
胡散晴らし、したくない?」
ヒイッ、とようやく、その兜の隙間から人間らしい声が聞こえる。それを耳にして、ハルキがニヤリと歪に微笑むと。盾を両手で持ち、おおきーく掲げて。
「はー、食いしばれよ?」
おお怖い。女の子怖い。
「ちょっ!? 俺ごと殴るな!? おいぃぃ!?」
「……はあ。それであんな事してたって訳ね」
グラントはため息をつく。隣でまだご機嫌斜めのハルキが激情を持て余しているのをひしひしと感じながらも、彼は一応そのプレイヤー……「Tommy」ことトミィから事の動機を聞き出していた。
簡単に要約すると、その男、トミィは壁戦士ことタンク志望だったらしいのだが、パラメーターをあまりにSTRのみに振り過ぎてしまい、更に身に纏った重装備の速度ペナルティを受けた結
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