第五話 天上天下唯我独(以下略)
[5/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
めっちゃ早い銀色の残影とかクイックなシルバーだったりはぐれたメタルだったりを連想させないではないが、取り敢えずそう呼ぶことにしたグラント。やっぱりネーミングセンスの無さを存分に発揮しております。
しかしそんなグラントの前で、ハルキは目を瞑りながら、剣を両手で持ち上段に構え始めていた。
「まあ見てなって。ちょっとだけ、そのはぐれきんぞ……君? をからかってやるよ」
元ネタを知らないせいかハルくん、少し口調がたどたどしい。だが言い終わるや否や、その顔を引き締めると、右足を半歩ほど後ろに引き、その身体に乾坤一擲の勝負を仕掛けんとする凄まじい気迫を滾らせた。
「……からかう? えっと、ハルくん?」
だがそんな事にもお構いなしに話しかけようとするこのおバカ落武者男。完全に集中し切っているハルキにはその声は届いていないのだが、その時二人の物理的距離が若干縮まっていて。
そしてその間に、二人を脅かそうとするかの様に割って入ろうと吹っ飛んできた銀色の風を……。
「……ふっ!!」
「んぎゃああぁぁぁっ!!??」
あ、残念ながらその悲鳴、グラントのものである。
それはそうだろう、突然自分とハルキの間を何かが通り過ぎてゆくのを感じたと思ったら、それを追う様にしてハルキが手にした剣を一閃させたのだから。それにしても、ヘタレである。
だが、ハルキのその攻撃はどうやら狙い過たず、相手に命中した様だった。思わずどかっと後方に倒れ込んだグラントとハルキの間には、その謎のプレイヤーに幾らかのダメージを与えた証拠である、赤いライトエフェクトが飛び散っていたのだ。
とんでもない反射神経である。実際のところキリトといい勝負である。彼とは違ってリアルで培ったその能力は、この仮想世界でも絶大な力を発揮していた。
「……いや、攻撃しちゃったらオレンジになるでしょ」
「あ、しまった……って、あれ?」
ハルくん残念、彼女のカーソルはその瞬間からその色をオレンジに変えてしまった。その事にも驚いたというのに、悲劇はそれだけでは終わらなかった。
「……剣は、どこいった?」
ハルキの右手からは、先程まで握っていた片手直剣「スタント・ブランド」が綺麗さっぱり無くなっている。慌てて空を見上げると、それはどうやらプレイヤーとの接触時にハルキの手からすっぽ抜けてしまったようで……綺麗な円弧を描きながら、向かって東側の崖に落ちていってしまっていた。
ちなみにその剣、流石に初期装備のスモール・ソードではこの先歯が立たないだろうというグラントの助言を受けて第三層の素材で作ったもので、ハルキはこの数日間、新しい剣の威力と切れ味の良さに感激し愛用していたのだった。よって、
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ